「チームの心臓」と平野直樹監督に信頼を寄せられる履正社FW廣野大河

 3試合連続のウノゼロで連覇に王手をかけた履正社。その履正社の攻撃陣を引っ張り、前線からのプレスで守備にも大きく貢献するのがエースのFW廣野大河だ。去年は2年生ながら選手権大阪大会で活躍し、準決勝の阪南大高戦ではスーパーサブとして途中出場し決勝ゴールを決めた。「チームの心臓」と平野直樹監督に信頼を寄せられる今年は背番号10を背負いエースとしてこの選手権に挑んでいる。

 準決勝の大阪桐蔭戦後「走ってチームを助けて見ている人に勇気と感動を与えたい」と話した廣野は足がつりながらも試合終了のホイッスルが鳴るまで走り続けた。今大会のゴールはここまで5回戦で決めた1ゴールだが、ゴール数には表れない仕事でチームに貢献している。

 「ゴールを狙いすぎると空回りしてしまうので」と不器用な一面を覗かせる廣野。履正社のOBである林大地(シント=トロイデンVV)に憧れるだけあってプレーも似ているが、廣野はより現実的でストイックなのかもしれない。

 準決勝第1試合の阪南大高vs金光大阪の試合中、第2試合を戦う履正社の選手たちはピッチの脇でウォーミングアップを開始した。その試合に目を奪われる選手が多い中、廣野が「関係ないぞ!自分たちに集中しろ!」と一喝。やはり準決勝からは会場がスタジアムになる事で雰囲気も一変する。廣野は去年のヤンマースタジアム長居での準決勝と決勝を経験している数少ない存在として自分の役割が何なのかをわかっているのだろう。

 今年の7月、履正社は和倉ユース大会に参加。去年の和倉ユース大会では青森山田と予選リーグを戦い、決勝でも顔を合わせ再戦していた。今年は準々決勝まで勝ち進んだものの大津(熊本)に0-0からPK戦で敗れ青森山田と対戦することは出来なかった。準々決勝で敗れた後、隣のコートで試合をする青森山田の試合を観ながら廣野は「今年も青森山田とやって負けたかった」と話した。その理由を「去年はこの和倉ユースで青森山田に負けてスイッチが入った。だから今年のチームもあの強度を体感すればスイッチが入ったと思うんです」。実にチームを第一に考える廣野らしい言葉だった。

 プリンスリーグでは阪南大高のFW鈴木章斗興國のMF永長鷹虎のJ1内定の超高校級の2人と三つ巴の得点王争いをしている廣野だが、この選手権ではゴールよりもチームプレーを優先しているように見える。6回戦ではMF名願斗哉がPKを獲得し、ゴールを決めるチャンスもあったはずだが、「あいつに得点を取って乗ってもらいたかった」と2トップを組む相方のFW宮路峻輔に譲っていた。リーグ戦とは違い得失点差もないトーナメントでは勝負に徹する姿勢を貫いている。それはやはり去年の全国大会で先輩たちが力を出し切れなかった姿を見ていたからだろう。

 いよいよ大阪の決勝の舞台に立つ廣野は「去年も苦しい試合でギリギリ勝ったので、相手も僕らに負けている分来ると思う」と決勝の相手の阪南大高を警戒するが、「個人の力も少しはあると思うんですが、僕らの強みは全員で攻めて全員で守ること」と、チームで相手を上回り、相手以上の覚悟でピッチを走り回るつもりだ。「もう一回全国でリベンジする」為にもここで負けるわけにはいかない。廣野は「阪南大高を倒して全国に行きます」そう言って準決勝が行われたヨドコウ桜スタジアムを後にした。

(文・写真=会田健司)

▽第100回全国高校サッカー選手権大阪予選
第100回全国高校サッカー選手権大阪予選