明秀日立GK谷口璃成

 「あと一歩だった」。届きそうで届かない。去年の冬もそうだった。今年の夏もそうだった。「毎週、関東の強豪校と戦えれば成長できる」。強い覚悟を持って香川からやってきた明秀日立のGK谷口璃成は3年間で一度も全国大会のピッチに立てず、高校サッカーに終わりを告げた。

 12月5日に行われた高校サッカー選手権の茨城県予選決勝。夏の総体予選でも敗れている鹿島学園との一戦に挑んだが、0-0で迎えた後半32分に得点を許した。「誰もがノーチャンスと思うようなシュートでも止めないといけない」。ロングスローの流れから喫した失点は防ぎようのないモノだったかもしれないが、谷口とっては悔いが残る一発だった。

 終盤に与えたゴールが決勝点。アディショナルタイムにはCKの場面で相手ゴール前に上がって局面の打開を図ったが、挽回できなかった。

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 最後まで縁がなかった全国舞台。1年次のインターハイは出場権を取れず、同年冬の選手権は第3GKで出場機会がなかった。レギュラーとなった2年次は夏のインターハイが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開催されず、冬の選手権は決勝で鹿島学園に敗れた。そして、迎えた今季。夏のインターハイでは0−2から逆転を許し、再び鹿島学園に惜敗。3度目の正直となった今回の選手権予選ではまたしても宿敵に阻まれた。

 本音を言えば、高校サッカーに悔いはある。「全然納得できない。力を出し切れなかった」(谷口)。ただ、3年間で積み上げてきた努力に嘘偽りはない。「サッカー人生をかけて、谷口をプロサッカー選手にする」。谷口の才能に惚れ込んだ大塚義典GKコーチの指導により、一からGKとしての“イロハ”を叩き込まれ、見違えるような選手になった。入学当初は194cmのサイズとは裏腹に筋力がなく、線の細さが目立ったなかったのも今では笑い話。本気で自分と向き合い、J2岡山への入団内定を勝ち取るまでに成長できた。

 「人生を変えてもらったと思います。何もできない状況から、プロに行けるまでに引き上げてもらった。良い結果で恩返しができなかったので、ここから返していきたい」

 最高の結果で高校生活を終われなかったが、谷口のゴールはもっと先にある。来春にはプロのサッカー選手として新たな一歩を踏み出す。明秀日立で過ごした3年間は谷口にとって人生を変えるターニングポイントだった。

▽第100回全国高校サッカー選手権茨城予選
第100回全国高校サッカー選手権茨城予選