専大松戸は第2代表として関東大会へと臨む(写真=多田哲平)
「日程については最初から決まっているものだから文句は言うつもりはないです。もちろん中1日や連日での試合で、選手を頑張らせることはできるし、選手も言えば頑張ると思います。でも、気合や根性で乗り切れと言ったら、サッカーの質ではなく、いかに無理をするかっていう気持ちのほうが求められてしまう。僕らはそれよりも質を高めることをすごく大事にしているチームなので。
選手はロボットじゃないし、労働者じゃない。アーティストだから。そこにリスペクトを持たないといけない。タフさも大事だけど、サッカーで一番素晴らしい部分ってクリエイティブなところだと思うんですよね」
野村監督のそうした信念や言葉は、行き過ぎた勝利至上主義や過酷な環境が問題視され続けている高校スポーツ界に一石を投じるものでもある。
「高校の部活ってサッカーに限らずやっぱり固い部分があるから、価値観を広げていきたい。高校サッカーって頑張らせることが美学みたいなところがありますよね。1回挫折して、苦しんで、それを乗り越えることが美しいことだっていう。色々な意見はあると思うけど、僕はそうではないと思う。未来につなげるために今があるわけだから。気持ちばかりが育っていっても、質と技術が伴っていかないと。僕だって負けたくないけど、それ以上に選手の将来とか、質とかをすごく大事にしたい。それは高校スポーツすべてに言いたい」
この県予選が終わっても、関東大会の本選があり、夏にはインターハイがあり、冬には選手権がある。そして、それ以降も選手たちのサッカー人生は続く。野村監督はそうした選手たちの将来を見据えているのである。
「今回の決勝で終わりじゃないし、高校サッカーで終わりでもなくて、その先がある。この試合で燃え尽きることはないし、高校サッカーで燃え尽きることはない。その先もずっとサッカーが楽しいと思ってやり続ける、それが最高なんです。だからうちは1回受験で離れる子はいるけど、引退という言葉は使いません。サッカーって素晴らしいスポーツで、選手たちにはずっと好きでいてほしいから」
神奈川で開催される関東大会の本選に向けても、そのスタンスはブレることはない。
「単なる試合じゃなくて世界を広げるチャンスだと思っています。いつも松戸にいる選手たちには、神奈川に行って、サッカーだけでなく、いろんな経験をさせてあげたい。これも全員が成長する機会だから。また世界を広げて、よりサッカーを楽しんでほしい。バルサが『クラブ以上の存在』だというけど、僕らも部活動以上のものを選手に与えたいなと思っています」
(文・写真=多田哲平)
▽令和4年度関東高校サッカー大会千葉予選
令和4年度関東高校サッカー大会千葉予選