酒井直樹監督からも期待を寄せられる(写真=多田哲平)

 そうした山本の課題について酒井直樹監督は試合後、期待を込めつつ指摘する。

 「彼はマイペースなところはありますけど、自分を犠牲にしてでも『勝ち続ける、負けない』という気概が強い。それにユースと同じ強度でやってもトップでは通用しないということを常に念頭に入れてやっています。ただ今は、どうしてもバタバタしてゴールしか見えてない時がある。そうなるとチームは勝ちを獲り逃すんです。

 しっかり自分を見れていないと冷静さを失うもの。彼の場合はボックスの中でいかに冷静に判断できるか。フィニッシャーとしては凄い能力を持っているので、そのエースストライカーとしてのバイタリティは消さずに、そこにプラスアルファで自分が見えてくれば。そこは経験かなと。2対1の状況でシュートを打って取られていたらプロでは許されないので。トップに上がっている(細谷)真大は味方を使えますよね。彼(山本)にもこの日の経験をひとつのきっかけにしてくれればなと」

 プロの舞台を見据え、山本はプレーの幅を広げようと模索を続ける。

 「前まではレヴァンドフスキのように、決めるべきところできっちりと決めるストライカーを目指していたんですけど、身長も違うしそれだけじゃダメだなと思って。僕は1トップのストライカーという感じではないので、今は結構メッシのプレー動画を見たりしています。周りを使いながら、スペースを使って自分でシュートまで持ち運べるし、ゲームメイクもできる。それでチームを勝たせているので、そういう選手になりたいなと」

 次なる目標のひとつは「プレミアリーグでの得点王」。現在は9得点で3位。1位(14点)の内野航太郎(横浜F・マリノスユース)、2位(13点)の熊田直紀(FC東京U-18)を追う。

 もっとも「得点王を獲ったからといってプロで通用するわけではない」とも口にする。

 「得点だけでなくて、もっと1個の1個のプレーの幅だったり、局面を一気に変えるプレーを意識しながら、チームとして上位を目指していきたい」

 チームを勝利に導く、より幅と深みのあるストライカーへ。山本はプロの世界に向けて、さらなる進化を誓った。

(文・写真=多田哲平)

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