埼玉県サッカー協会の田中龍太郎技術委員長と(写真=河野正)
母校で11年目の春を迎え、監督として残された期間はそう長くないが、全国高校選手権で勝つことを常に狙っている。故にここ4、5年で指導法や考え方に変化が見られる。
1月の新人大会南部支部予選は3回戦で姿を消した。赴任後初めて関東高校大会予選の出場権を逃したこともあり、全部員と1対1で面談し、選手の率直な思いを聞いた。保護者にもメールなどで意見を寄せてもらった。
この敗戦をきっかけに自ら考え、行動してもらいたかったからだ。
「大会で勝つのは1チームだけ。敗戦をどれだけ大事にし、負けから何を得るのかが成長につながる。負けたからこそ学べることがある。勝利にこだわり、勝つことを前提にしているからこう言いたいのです」
選手との向き合い方を変えた名将は、埼玉県の公立校としては最初に完成した人工芝グラウンドで、哲学者のような思考を繰り返しながらチーム強化に腐心する毎日だ。
(文・写真=河野正)