「サッカーは理不尽なスポーツ」「勝ちから逆算」指導哲学を語る野崎監督(写真=河野正)

 『理不尽、愚直、精進』と書かれた横断幕が、グラウンド脇のネットに長い間掲げられていた。

 一見すると誤解されそうだが、「サッカーは一番便利な手を使えない理不尽なスポーツ。いろんな困難に直面しながら、点を取るためゴールを守るためにすべてを犠牲にして愚直に一生懸命やる。そういう競技と向き合っているのだから、どんなことも受け入れ、精進して次に進まないといけない。こういうメッセージなんですよ」と野崎監督は解説する。

 13年2月の新人大会で7度目の優勝を飾ると、新学期から浦和南に転勤。「名残惜しかったが、あっと言う間の24年でした」と振り返る。

 四半世紀ぶりに戻ってきた母校は学力が上がり、サッカー部への推薦制度もなくなっていた。好人材が集まっているように思えたが、実際には浦和東のほうが個として面白い選手が多かったという。

 それでも2年目の新人大会で2位となり、4年目の全国高校選手権予選では準優勝。6年目の18年は9年ぶりにインターハイ出場を果たすと、第97回全国高校選手権予選では、インターハイ4強の昌平との決勝対決を逆転で制し、17年ぶりに“赤き血のイレブン”を選手権に導いた。私学最盛の中、公立の伝統校を復興させたすご腕の持ち主である。

 選手の個性によって味付けを変えながらチームをつくっていくが、構築する過程には“勝利からの逆算”という考え方がある。

 「選手の能力を伸ばし、適材適所を探るのが毎年の大切な仕事で、自分のチームと対戦相手を分析した上で、勝ちから逆算してどう戦わせるかを導き出すんです」

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