試合前には選手一人ひとりに声をかける(写真=多田哲平)

 一方で試合中の指示は、より具体的だ。『ここから3分、集中しよう』『あと10分、走り切ろう』と、分かりやすい数字を用いているのだ。これは意識的にしているのだという。

【マッチレポート】尚志 vs 桐光学園

 「具体的な数字を付け加えたほうがアクションを起こすためのスイッチが入りやすいんです、今の子たちは特に。ですから、そういうことは気を付けてコーチングしています」と鈴木監督はその意図を語る。

 3回戦の帝京大可児戦(3-1)でも、耳に残っている鈴木監督の指示がある。押され始めた後半途中に『いいか。良い守備と1対1がテーマだぞ』と指針を改めて投げかけていた。単に『我慢の時間だぞ』などと抽象的な表現で気合を入れ直すのではなく、冷静に方向性を定め直すことで、選手たちは今やるべきことが整理されやすいだろう。

 実際にそれからほどなくして、一つひとつの局面で先手を取るようになり、ペースを握り返していた。

 そうした、より選手に浸透させるためのワードセンスや、その場に応じたテンションを巧みに使い分ける鈴木監督の手腕は見事。そのコーチングの妙が、桐光学園の強さを引き出しているのかもしれない。

 なおベスト4に進出した桐光学園は、8月3日の準決勝で国見(長崎)と対戦する。

(文・写真=多田哲平)

▽令和5年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
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