優勝決定後、選手たちに胴上げをされる(写真=多田哲平)

 萬場監督は茨城県の指導者養成に携わりながら、自らも「プレーヤーズファースト」の意識を再確認した。チームに歪みが生まれた春には、選手、スタッフが自分たちと向き合う時間を作った。そうした苦境がチームを一段と強くしたのである。

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 準決勝で日大藤沢を破ったあとに萬場監督が「春先の不安定な状態から、今すごく充実しているところに来られたのは、選手、スタッフ、保護者がサッカーに対する環境を作ろうとしたから。それのご褒美的なイメージが僕のなかで強いです。苦しんだぶんの撥ね返りが来た。それは監督としてより先生として嬉しい」と言っていたのが印象深い。

 すべてはチームの成長のため。そもそも今大会に臨むうえで6試合戦うことを想定したのも「僕らは常にハイステージにいるわけではないから、注目してもらったり、自分たちを成長させようと思ったら結果にコミットしなければいけない」と思ったからである。

 決勝を前に萬場監督は以下のように語っていた。

 「僕は『全国制覇』という言葉は絶対に使わないようにしているんです。全国を制覇する力は正直ないと思っています。ただ、このタイミングで『日本一』になることは、もしかしたらできるかなと、多少なりとも自信はあります。ただその結果で何かが変わることはない。ヤマダのタフさ、シズガクの上手さ、他のチームの個々の上手さ、そういう気付きを得られる大会です。そして、あとは気持ちよく帰れるかそれだけだと思います」

 初優勝を果たしたあとも、そのスタンスは変わらない。「まだまだ課題だらけですね。今回の大会に関しては、うちのチームの努力が『日本一』に見合った結果になったのは素直に嬉しいですが、まだまだ選手として積み上げなければいけない課題はより明確になった。頑張る姿勢は十分だが、質にこだわることは6試合で気づかせてもらいました」。

 常に成長を見据え、そのための準備を怠らない萬場監督に率いられた明秀日立は、日本一の経験でまたさらに強くなるに違いない。

(文・写真=多田哲平)

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