近大附の寺師悠斗監督(写真＝会田健司)

　10月29日、第102回全国高校サッカー選手権大阪予選の中央トーナメント2回戦がJグリーン堺で行われ、近大附が関大北陽を3-1で破り準々決勝に駒を進めた。

　プリンス関西1部の近大附は初戦となった羽衣学園戦で先制されながらも逆転勝利。10分にFKから関大北陽にゴールを決められ、この試合も先制を許す展開となったが、前半のうちにMF11高畑宗希(2年)のミドルシュートで同点に追いつくと、後半にはFW9上田泰地(3年)が2ゴールを挙げ見事な逆転勝ちを収めた。

　試合後、寺師悠斗監督は「今日は先にやられても慌てないというのをとにかく言っていて、インターハイの経験(準決勝で先制しながら関大一に逆転負け)、追いつかれて逆転されて3発目もやられてと、試合運びのところがメンタル的にも課題だったので、今日はやられても我慢をして、絶対にチャンスが来るからと言っていました。試合がどんな形に変わってもできるようにいままで練習をしてきたので、上手くいかなかったときにひっくり返せないという近年の勝負弱さを変えていかないと常々言っていて、それをこの2試合連続で苦しい中でやってくれたのが大きい」と逆転勝利を喜んだ。

ゴールを決めたMF高畑は寺師監督と抱擁(写真＝会田健司)

　そして「ここがひとつの山場だと思っていたので、廣谷と心中するつもりでスタートで使いました」と、指揮官は初戦で途中出場し、半年ぶりにピッチに帰ってきたキャプテンのMF6廣谷郁海(3年)をこの試合でスタメンに抜擢。キャプテンが不在の間、チームを引っ張ってきた副キャプテンのMF7矢野晧誠(3年)とDF5若松大輔(3年)と3人が揃ったことも大きいと話した。

　さらに「90分替えなくてもいける」というFW9上田泰地(3年)とFW18梅地隆世(3年)の頼れる2トップに、絶好調の高畑を"偽FW"として使う変則3トップが3ゴールという結果を出したことで、攻撃の幅も広がった。

　難敵・関大北陽を破ってもまだベスト8と激戦区大阪の頂点への道のりはまだまだ長いが、「自分たちがインターハイに行けなかった悔しさがあるので、準々決勝と準決勝で別のチームになってしまったあの時のみたいにならないように、先を見ずに一戦一戦やっていこうと思っています。自分たちがやってきたこと、やるべきことを発表する、そういう場にしたいと思います」と意気込む寺師監督。

　勝てば全国という試合で、痛恨の逆転負けを喫したあの試合から這い上がってきたからこそ同じ轍は踏まない。

選手たちと一緒に歓喜の歌を歌う(写真＝会田健司)

　そしてこのチームは監督と選手との距離感が近いのも特徴だ。

　ゴールを決めた選手が監督に抱きつきにいけば、監督も試合後に選手たちが歓喜の歌を歌う輪に加わわってしまう。応援団が寺師チャントを歌えば、それに乗って踊る。就任1年目の新米監督は「慌てるなと言っていた僕が一番焦っていた」「失点した時の先生の顔がヤバかったっていじられるんですよ」と選手たちにいじられることを嬉しそうに話す。

　名将からチームを引き継ぎ、早くも寺師カラーが色んな所に垣間見える。

　最高の雰囲気で準々決勝に勝ち上った近大附は11月3日に大阪桐蔭と激突する。

(文・写真＝会田健司)