息子の挑戦に喜ぶ大久保嘉人氏(写真=古部亮)
仲の良い家族としても知られる大久保家。抗がん剤治療を始める妻・莉瑛さんの為、国見時代以来の坊主頭にした父と一緒に自分や弟たちも揃って坊主頭にしたこともあった。
「お父さんが”ただいま”って帰ってきたら頭が坊主になっていて、手にバリカンを持っていたんです。僕たちが、なんで坊主になったの?と聞いたら、『お前らも坊主にするぞ!』って言いだして。絶対に嫌だ!って30分ぐらい抵抗していたんですけど、お父さんが『じゃあオモチャをかってあげる』って言ってきたので、みんな坊主になることを即決しました(笑) 結構恥ずかしかったんですけど、結果的には良かったなと思っています」という碧人が裏話を明かしたエピソードも家族の仲の良さを物語っている。
「本当に友達みたいな感覚なんですけど、サッカーの時は父親を感じるんですよね。でもそれ以外は年下なのかと感じることもあるぐらいです(笑)。全然気取ったりする人じゃないし、誰にでも優しく接する人ですね。カッコつけたりもしないし。そういうところは本当にリスペクトしています。今はサッカーをやっていた時よりも忙しそうで嬉しいです。CMに出たり、テレビで見る機会も増えましたし、演技をしているのを見るのも楽しいです(笑)」。
選手を引退し、メディアの仕事など幅広く活躍する父親は友達のようで、そして偉大だ。
父親の背中を見ながら育ち、プレッシャーとの戦いで苦しみも味わった。しかし、これから息子としてではなく、ひとりの漢としての挑戦が始まる。
「リスペクトはしていますけど、父親を超えたい。でも一番はお父さんの子供として認められたい。プレッシャーはもちろん大きいですけど、そこが僕の一番の目標ですね。それが厳しい道のりだってことはもちろんわかっているんですけど、覚悟も決めていますし、やり切りたいと思っています。それをやり切った時に残るものが絶対にあると思っています」。
覚悟を決めた大久保碧人がスペインへ旅立つ。
(文=会田健司)