その一瞬のひらめきとは....。

 「10番の近藤祐成君からボールが来て、 自分が1対1の場面で抜こうとしたんですけど創価は僕らにとっては格上なんで無理だなと思って1回下げ、どう行こうかなと思ったら、何故かサイドバックとボランチの間が空いていて、これ行けるなと思ったんです。そうしたら、そこにボールが流れてきて、相手のCBは自分がシュートを打つと思ってスライディングしてきたので、ダブルタッチで決めるだけでした」

 わずか数秒の間で、大重には色々な景色が見え、様々な考えが浮かんでいたようだ。

 かくしてゲームをひっくり返した成城学園。後半はハーフタイムの監督の指示に見違えるように変貌を遂げ、創価の攻撃に対応する。それでも走らされることには変わりはなく、疲労はピークに達していた。

 「チーム的にはバック陣が安定しいて、そこでバック陣とキャプテンのアレックス(大澤アレキサンダー開)君が弾き返すのを拾うっていうのを目標にしたんですが、相手のセカンドボール回収率が結構高かったんで、厳しかったです。今までで一番走ったって思うぐらい走ってたので、残りあと10分ぐらいの時に両足を攣りそうになったのですが、ここを守りきれないと3年生も引退しちゃうっていう気持ちが強かったんで、死ぬ気で走りました」

 そしてタイムアップを告げるホイッスル。負けられない気持ちが、チームに勝利をもたらした。

 大重は「まずはチームが目標としてるベスト16を突破して、次はインターハイで負けた多摩大目黒にリベンジしたいと思っています。もちろん自分自身も活躍したいです。西が丘に行くのが僕の夢なので、必ずそこに行きたいと思います」と、この先の目標を掲げ、笑顔でチームの輪に戻っていった。

(文・写真=西山和広)

▽第103回全国高校サッカー選手権東京予選
第103回全国高校サッカー選手権東京予選