
市立橘イレブン
全国を目指すには、わずかなチャンスを確実にものにするフィニッシュの精度。その差が、突きつけられた。
だが、森谷監督が見つめているのは、今日の結果ではない。
「もっとできたと思います。彼らだったら、やれるはずなんです。だから、“もう一個、やらせたい”です。リーグ戦もまだ続く。ここからまた立て直して、本当に『強いチームだね』って言ってもらえるようにならないと」
この日、市立橘の応援席は鮮やかだった。ブラスバンドが鳴らす音。新作の応援グッズ。吹奏楽部の生徒たちも、部活の時間を割いて駆けつけてくれた。
「ほんとに、いい学校なんです。勉強も行事も部活も、みんな本気で頑張ってる。そういう仲間たちが応援してくれてたからこそ、勝って、もっと盛り上げたかった。でも…感謝しかないですね」
全国の景色は、まだ遠い。でも、諦めてはいない。いや、むしろここからが、本当のスタートなのかもしれない。
「僕は、プロサッカー選手を育てたい。そのためには、全国大会に行かなきゃいけないし、上のリーグにも行かなきゃいけない。でも、選手たちはきっとやってくれると思う。『プロになる』『大舞台で活躍する』っていう気持ちを、もう一度思い出して、また挑んでほしい」
取材の最後、「次は選手権で、決勝を勝った後に話を聞かせてください」と声をかけると、監督は笑った。
「“もう一個、やらせたい”」
その言葉の先には、敗戦を越えてなお消えない、未来への炎が確かに灯っていた。
(文・写真=西山和広)
▽令和7年度全国高校サッカーインターハイ(総体)神奈川予選
令和7年度全国高校サッカーインターハイ(総体)神奈川予選

