市立橘FW波壁航希

 10月13日、選手権の舞台、かもめパーク。勝利という名の重圧を背負い、第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選2次予選2回戦に、市立橘の選手たちがピッチに立った。彼らの戦いは、美しくもどこか不完全な物語。しかし、その濃密な80分間で、ひときわ眩い光を放ったプレイヤーがいる。背番号10を纏う、FW波壁航希だ。

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 前半、橘の攻撃は流麗でありながら、ゴールネットを揺らすことができない。重苦しい空気が漂う中、波壁のシュートも市ヶ尾の守護神に阻まれ続けた。「ちょっと怖がって」いたというチームの慎重さが、彼の天才的な閃きを曇らせていたのかもしれない。だが、彼の真価は、指揮官の檄によって火が点けられた後半に解き放たれる。

 チームが待望の先制点を挙げ、わずか6分後の50分。バイタルエリアでパスを受けようとした波壁は、一瞬の判断で背後のディフェンダーの意表を突く。彼が狙ったのは、グラウンダーのパスではなく、バウンドを利用したトリッキーな一撃だ。

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▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選