その転機はハーフタイムだった。駒澤大学高等学校のロッカールームからは、壁を隔てた先にいた我々の耳にも届くほどの猛烈な怒声が轟いてきていた。「全然戦っていなかった。歯がゆくてね。上手い下手よりも大事な部分がある」。大野監督は選手たちを怒鳴り付けた理由をそう説明する。駒澤大学と言えば伝統的に「戦える」チーム。その部分で負けているようでは話にならないということだろうし、「もっとやれるはず」という選手たちへの期待の裏返しでもあったのだろう。

 大野監督は「怒るとやるんだよね。後半になると流れが変わる。今年はこんなゲームばかりなんだ」とも言う。実際、ハーフタイムを挟んで駒澤大学の威勢は目に見えて変わった。55分にFW安藤丈が左足シュートを強烈に突き刺して同点とする。追い付かれた矢板中央は負傷で先発を外れていたFW森本ヒマンを投入して攻勢を強めるが、結果としてこれは裏目に出る。65分、矢板のCKが続いたところでの攻防が、ゲームの明暗を分けた。ベンチから飛びだした大野監督はこのピンチに際して「カウンターを狙え」と指示。「あれはカンですよ」という勝負師の一言が効いたか、CKをはね返した流れから始まったカウンターで、最後はMF山口将広が押し込んで、逆転に成功。「よく長い距離を走っていた。ピンチをビッグチャンスに変えてくれた」と指揮官も納得のゴールだった。

 さらにこの直後の66分、動揺の見えた矢板中央にトドメの1点がのしかかる。駒澤大学高等学校DF須藤皓生のFKに安藤が当てると、これを交代出場のFW佐藤瑛磨が押し込んで、3-1。この1点で、勝敗はほぼ決した。大型選手を並べる矢板の攻勢に対し、駒澤大学は粘り強く対応。そのまま逃げ切り、2回戦へと駒を進めた。

【取材・文=川端暁彦】

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