そして68分、長崎総科大附は左CKからDF別府史雅がバックヘッドでそらしたボールがサイドネットへ吸い込まれて、再びリードを奪う。残り時間は10分ほど。追い込まれた丸岡はCBの河上を前線へ上げて、田海との2トップで勝負に出た。すると76分、左サイドからMF中村晃大のドリブル突破が起点となり、河上のポストプレーからのパスを受けた田海がエリア内へ侵入してゴール右隅へ流し込む巧みなシュートで同点に追いついた。残り時間は5分を切っている。このまま行けばPK戦だが、丸岡は「やるぞ!勝つぞ!という勢いで、もう1点を取りに行った」(川中)。77分には長崎総科大附の千葉に放たれた渾身のミドルシュートがバーに直撃するピンチもあったが、終了間際の79分に歓喜の瞬間が訪れる。左サイドからSB田島優也がクロスを送ると、ゴール前で相手GKがクリアしきれず、そのボールを河上が押し込んで、ついに逆転。3-2のスコアで試合終了のホイッスルを迎えた。

丸岡の小阪監督は試合後、安どの表情を浮かべながら「相手がうちのストロングポイントを抑えに来るのはわかっていた。どう得点を取るかをずっと考えていました。河上を前線へ上げることは、田海との2トップで彼らの高さを生かそうという狙いです。県予選が終わってから準備はしてきたが、あんなに上手くはまるとは思っていなかった」と正直な感想を述べている。河上のFW起用は12月の練習試合で準備してきたオプションだったが、それが見事に実を結んだ。

2得点1アシストと全得点に絡んだ河上だが、1失点目は彼のミスから生まれている。「ずっと集中力やクリアの部分が自分の課題で、1失点目もロングボールが来るとわかっていたのに、相手に密着しすぎたところで背後に蹴られて慌ててしまった。その直後は『やってしまった』と落ち込みましたが、田海君や倉持君が『大丈夫や。取り返す時間はまだあるから』と声をかけてくれて、切り替えることができました。」と先輩たちの声に救われたことを明かしている。2失点目の後、FWに上がれと指示されたときも「後ろは頼れる3年生の先輩たちがいるので、自分は任された前線の仕事をやるだけだ」という心境だったという。昨年は応援席で試合を見ていた2年生DFがヒーローになったが、そんな彼を支えた3年生たちの存在も忘れてはならない。

2回戦の相手は静岡学園だ。大会屈指の攻撃力を誇るチームと対峙するが、川中が「僕たちは粘り強い守備が特徴なので、そこで守って少ないチャンスを決めたい。静岡学園は5年ぶりだけど、僕たちは2年連続出場。去年の経験も生かしていきたいです」と話した試合展開へ持ち込むことで、虎視眈々と番狂わせを狙っている。

(文=雨堤俊祐 写真=石津大輝)

▽第98回全国高校サッカー選手権大会
第98回全国高校サッカー選手権大会