攻撃面に関し、本人は自嘲気味に振り返ったが、オランダに対してチームで培った技術は存分に発揮されていた。的確なポジショニングでボールを引き出すと、正確なパスでゲームメイク。効果的な散らしを見せながら、隙あらば自ら前に運ぶプレーも相手の驚異になった。守備面でも献身性を見せ、自分よりも大柄なオランダ代表に真っ向勝負。相手よりも先に身体を入れる頭脳的な動きも冴え、攻守で日本の勝利に貢献した。
初めて挑むワールドカップの舞台。今でこそ日の丸を背負っているが、1年前は世代別代表に選ばれたことがない無名の選手だった。昨年は東京Vユースでレギュラーはおろかベンチ入りすらできない立場で、主な役割は戦術分析用のビデオ撮影係。ナイジェリアにルーツを持つ藤田に転機が訪れたのは今年の春だ。開幕前のフェスティバルなどで出番を得ると、開幕後はCBやボランチで安定して試合に絡めるようになった。その活躍が目に留まり、7月の新潟国際ユースで初めてU-17日本代表に選出。監督からも高い評価を得ると、あっという間に代表で地位を確立した。
最大の武器は技術の高さや空間把握能力。パスセンスも水準以上で守備でも気が利くポジショニングで相手のピンチを未然に防ぐ。加えて、明るいキャラクターの持ち主で、初めての代表活動では2日目の時点でチームに馴染んでいたという。明るいキャラクターを生かし、ムードメーカー役を担える点もチームにプラスだ。
「試合が始まる直前まで世界大会という実感がなかったのですが、始まってみると、本当に相手も死に物狂いだし、迫力もすごかった。自分は結構緊張するタイプで実際にしていたけど、今日は緊張をしていたのかなと思います」
代表デビューから僅か3ヶ月で中心選手になりつつある藤田。初戦で示したポテンシャルは間違いなく本物だ。2戦目以降も彼の一挙手一投足から目が離せない。
(取材・文=松尾祐希)