一方、流通経済大柏も黙っていない。
 ビハインドを負って迎えた後半開始と同時にDF栗島健太、MF松本雅也の2人を投入。それまでの4-4-2から4-1-4-1の布陣へとシフトして反撃の糸口を探る。中盤の枚数を増やすことで市立船橋のパスワークを封じ込めることに成功すると、攻撃面では43分、流通経済大柏が誇る“飛び道具”、FW織田敦暉のロングスローからこぼれ球をFWジャーメインアレクサンダー正がシュート。45分にはDF浜野駿吾の直接FKでゴールに迫った。

 互いに前線のスピードを生かしたシンプルな攻撃が目立つ中、次なるスコア変動は市立船橋によってもたらされる。ラスト10分の攻防、際立ったのは「パーフェクトに近いゲームができた。」と試合後に朝岡隆蔵監督が評価した市立船橋の強さ。74分、直接FKのこぼれ球をMF金子大毅が蹴りこんで追加点。さらに続く75分には後半途中出場を果たした永藤がGKとの1対1を冷静に沈め、ダメ押しとなる3点目を奪取。市立船橋が終盤の連続ゴールで一気に勝負を決めた。

 試合後に行われたインタビュー、朝岡監督が「選手たちはいろいろな方の想いをプレーに変えてくれた。感動した。」と、うっすらと目に光るものを浮かべながら選手に賛辞を贈れば、先制弾の工藤、そして3か月間の戦線離脱を経て復帰しチームに3点目をもたらした永藤が共に口にした言葉は「日本一」。最強のライバルをファイナルで退け、171校の頂点に立った名門の目標はあくまでも6度目の全国制覇だ。

(文・写真 金子 侑史)