敗れた新田も、見る者の胸を打つ戦いを繰り広げた。清水祐貴監督は「チームとして狙い通りの試合はできたが、勝たせてやることができなかった。(狙いとしては)守備で構えるのではなく、前から積極的にいきたかった。全国大会が初めての選手たちだったので、どれだけやれるのかと思っていたが、出だしは想像以上にやってくれた」と選手をたたえた。また、勝負を分けたポイントとしては退場者を出したシーンではなく、前半終了間際の1失点目を挙げている。「(ゴール前の)人数は揃っていたので。このチームはプレッシングをずっとやってきた。(10人になって)前線を一枚下げて耐えるのか、前線を残してボールを追いかけるのか。そこを選手に伝えるのにハーフタイムを待つ必要があったので、耐えたかった」と悔しさをにじませた。

 キャプテンの大野は「チームで歴史を作ることを目標にしてきた。それはできたと思う。選手権はサッカーを始めたころからのあこがれの場所。『やっと来れたな』と思ったし、チームメイトも一人ひとりが力を尽くしてくれた。後輩たちは悔しさを感じているはずなので、自分たちの代よりいい結果を残してほしい。『借りを返してほしい』と伝えました」と話している。

 「欲を言えば勝ちたかったが、あれだけ注目されるチームに一時は2点差をつけた。見ている人を楽しませる試合ができたことは良かった。ここから連続出場をして、また新たな歴史を積み重ねていきたい」という清水監督の言葉も清々しかった。選手だけでなくスタッフも含めて、ピッチ内外における選手権への準備や戦いなどの経験値が少ない中で、見事な試合を演じてみせた。39年ぶりの全国の舞台は悔しい初戦敗退となったが、その戦いは賞賛されるものだった。

(文=雨堤俊祐)

▽第99回全国高校サッカー選手権
第99回全国高校サッカー選手権