主将・掛見直央(写真=雨堤俊祐)

東山は試合には敗れたが、京都橘有利という事前の下馬評を覆す戦いを見せた。今大会はベスト4まで4-4-2で戦ってきたが、この日は5-3-2を採用し、選手起用でも主にリザーブだった野澤とMF大山輝士(3年)という3年生の2人をスタメンに登用。また、昨年度の大会で活躍していた李とU-16日本代表候補の仲里勇真(1年)はここまで起用せずに、決勝戦への隠し球として温存し続けていた。野澤のロングスローもベスト4までは一度も投げさせず、決勝戦で始めて封印を解かせている。「この1週間で考えたことじゃない。トーナメントの組み合わせが決まった後からずっと考えてきたことで、本当なら使える選手も(決勝まで)使わずに我慢していた」(福重良一監督)と、この一戦にかける執念が伝わってくる采配だった。指揮官は「選手はこちらの意図を汲み取ってやってくれた。(野澤や大山も)決勝までモチベーションを落とさずに来てくれたし、今日もしっかりとしたパフォーマンスを見せてくれた」と選手たちをねぎらった。一方で「(接戦にもちこんだ、ではなく)ものにしないといけなかった。『東山よくがんばったね』では駄目なんです。全国を見ても強豪校が敗退している。うちも京都橘を倒して全国を取らないといけなかったし、そこに力が足りなかった」と善戦で満足してはいけないことを強く語っている。

キャプテンのMF掛見直央(3年)は「キャプテンとして(2点を追いかける状況で)ベンチに下がるのは辛かったし悔しかったけれど、それはいまの自分の実力。それよりもチームとして勝ちたかったし、できることは全部伝えようとしました」と後半途中で交代した後も、ベンチから必死にフィールドの選手たちへ指示や激励の声を出し続けていた。「1試合をとおして内容は悪くなかったし、求めていたものは出せたけれど、セットプレーで試合は決まってしまう。結果をつかめなかったのは悔しい。この舞台で感じた思いや反省点を、後輩たちには生かして欲しい」と言葉をつないだ。今大会はベスト4まで1年生が4人スタメン起用されている。この経験値と先輩たちの思いを来年へつなげて、新チームでの活躍を期待したい。

(文・写真=雨堤俊祐)

▽第99回全国高校サッカー選手権京都予選
第99回全国高校サッカー選手権京都予選