仲間たちの想いも背負って。10番FW丸山畝史がチームの窮地を救う2ゴール。

 前半を終えて0-2という状況。「もうダメかもしれない」という気持ちもあったという。それでも「ベンチにいる3年生や辞めていった人たち、あとは先輩たちや学校の人たちにも試合前に「頑張れよ」みたいなことを言われていて。その人たちの顔がハーフタイムで浮かんで、それで力が出たと思います」とFW丸山畝史。託された想いが諦めかけた心にエネルギーをくれた。

 すると後半5分にセットプレーのこぼれ球を頭で叩きつけて反撃の狼煙。その後も学校の持久走大会では陸上部と1、2を争っているという走力、またこちらも校内1位だという短距離のスピードを生かしてサイドを何度もアタック。その中で何度も倒され痛む場面もあったが、「ファールでしか止められないFWというのは自分の目指してきたところ」とチャレンジし続けた。

 その後も攻め続ける中で得点が奪えず苦しい時間帯が続いたが、「チームを信じていましたし、絶対に自分の前にこぼれてくると思っていました」というのはストライカーの本能だろうか。そしてその瞬間はラストワンプレーでやってきた。後半43分、全員攻撃で味方が繋いだボールが丸山の前にこぼれると迷わず右足を一閃。「正直キーパーは見ていなくて。余計なことを考えず、もう絶対に決めるんだという気持ちだけで打ち込んだシュート」がチームを窮地から救った。

 「もうサッカー人生の中でも一番心に残るゴール。試合中だったんですけど、泣きかけて。ベンチの3年生にも一目散に行けて。ずっとやってきた仲間なので、本当に良かったです、マジで…」。

 実はこのコロナ渦で一度はサッカーを辞めようとしていたという。実際に顧問にも退部の意思を報告。その中で「でもやっぱりこの頑張っている3年生がいて、こいつらのためにも自分もいてあげないといけないと思って残りました」。そして一言、「本当に残って良かったです」。

 終盤は「もうつってましたね(笑)」という中で、限界まで走り抜いてチームを勝利に導いた。

 代表決定戦も仲間たちの想いを背負って挑む。「やっぱり3年生、学校の人たち、辞めた人たち、そして家族を含めて、僕たちは全員の気持ちを背負っている。次は失うものはもう何もないですし、全部出し切って、3年間のみならず、自分のサッカー人生の悔いがないように頑張らなきゃいけないと思います」と丸山。代表決定戦の相手は強豪・狭山ヶ丘だが、苦しい時、諦めそうな時は仲間たちの顔を思い浮かべながら勝利を目指す。

記事提供:埼玉サッカー通信・石黒登

▽第99回全国高校サッカー選手権埼玉予選
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