U-15日本代表候補、仙台育英に7-0で大勝
U-15日本代表候補 vs 仙台育英
2年後のU-17ワールドカップを目指すU-15日本代表候補が福島県内で合宿を行った。
チームが立ち上がって5度目の活動となった今回も廣山望監督の下でトレーニングに励み、27名の選手がさらなる成長を目指して汗を流した。この世代はコロナ禍の影響で海外遠征が行えておらず、経験値の不足が懸念されている。そうしたネガティブな要素を跳ね除けるべく、スタッフ陣も選手へのアプローチに工夫を凝らした。とりわけ力を入れたのが、決定力向上だ。今合宿の冒頭では選手たちに先の東京五輪を題材としながらミーティングを開いたという。
「東京五輪の準決勝ではスペインに対し、90分+30分を戦って0-1で敗れました。日本は大会を通じて粘り強く戦い、最後の局面でも守れるチームでしたし、それは2019年のU-17のワールドカップでも同様でした。(ただ、勝ち上がるためには)決勝トーナメントのプレッシャーや勝てばメダルが獲得できるというプレッシャーの中で仕留めないといけないけど、スペイン戦では120分の中で枠内シュートは1つか2つしかありませんでした。彼らが7年後にロサンゼルス五輪を目指し、さらに2030年のワールドかアップで何人かメンバーに入ってほしいし、そこで得点を取るということを考えたら、今から厳しさを求めて習慣にしていかないといけないなと思った。なので、東京五輪での悔しさも含めて、今回の立ち上げ時に強めにメッセージを発信しました」
そこで強調された言葉が“ゴール前の常識を変える”だ。今合宿ではシュート精度を高めるための指導が施され、代表で得た感覚を所属でも継続して取り組むことを想定してアプローチを行った。
U-15日本代表候補 vs 仙台育英
9月28日の鹿島アントラーズユース戦は2-3で敗れたが、9月30日の仙台育英戦(35分×3本)では指導の成果がほんの少し顔を覗かせた。
序盤は中盤でリズムが作れず、ボールを失う場面が散見。ミドルゾーンでロストし、カウンターを浴びる場面も少なくなかった。それでも時間の経過とともに徐々にペースを取り戻す。両サイドハーフの杉浦駿吾(中3/名古屋U-15)や市村健(中3/レイソルTOR)、2トップの道脇豊(中3/熊本U-15)や山本将太(中3/磐田U-15)がうまく連動してゴールを脅かした。すると、14分にCBの松本遥翔(中3/JFAアカデミー福島U-15WEST)が右サイドを突破し、ゴール前にクロスを入れる。これに道脇が頭で合わせ、早い時間帯に先制点を奪った。
以降も、カウンターからピンチを招く場面もあったが、粘り強く対応しながら攻撃を仕掛けていく。1-0で折り返した後半も積極的にゴールを狙うと、7分にMF今富輝也(中3/神戸U-15)が左足でミドルシュートを決めてリードを広げた。その後も優勢に試合を進め、18分にメンバーを7名入れ替えた後も貪欲にゴールを目指した。198cmのFW木吹翔太(中3/JFAアカデミー福島U-15WEST)と189cmの磯崎麻玖(中3/大宮U15)の2トップも個人技でボールを運び、決定的な場面を作っていく。すると、30分に左CKの流れから左SB武田絢都(中3/徳島Jrユース)が押し込むと、32分には右サイドを突破した磯崎の折り返しから佐藤龍之介(中3/FC東京U-15むさし)がネットを揺らした。
3本目に入っても、U-15日本代表候補の勢いは止まらない。12分に右サイドを抜け出した倉林佑成(高1/千葉U-18)のラストパスに木吹が合わせて追加点。17分には左サイドハーフの小竹知恩(中3/プログレッソ佐野U-15)が右足でシュートを決めると、終了間際にも木吹がこぼれ球を頭で押し込んだ。
7-0で勝利したU-15日本代表候補。「選手たちは、自主練習で良いミドルシュートを打ったりしています。しかし、佐藤寿人選手もよく言っていますけど、PA内でシュートを決めることが8割」と廣山監督が話す通り、世界の強豪国はエリア内でのチャンスを確実に決めてくる。そうしたテーマ設定を行った一戦で選手たちは成果を見せ、7得点中6得点をPA内で決めた。試合の運び方や守備面で課題を残したのも事実だが、シュートという課題に関しては成長の跡が見られたのは間違いない。しかし、決定力は簡単に身に付くわけではない。今回の合宿で学んだことを選手たちが所属クラブでどう生かしていくか。その積み重ねを経て、次の活動で選手たちがどのような姿を見せてくれるか注目だ。
(文・写真=松尾祐希)