「1-0のドラマ完結」正智深谷が武南を下し7大会ぶり3回目のインターハイ出場決定!

ゴールして喜ぶ正智深谷イレブン

 全国高校総体(インターハイ)の埼玉予選は23日に決勝が行われ、正智深谷武南に1-0で勝利し7大会ぶり3回目のインターハイ出場を決めた。

 「1-0のドラマ完結」小島時和監督はそう振り返った。正智深谷はこの決勝まで4試合全てを1-0というスコアで勝ち上がり、そしてこの決勝でも武南に1-0で勝利。全5試合1-0の同スコアで優勝という、稀に見る優勝劇となった。

 試合は序盤から武南がボールを握る展開。小気味よいリズムでショートパスを回してると思えば、対角にサイドチェンジの長いボールも入る。しかもそのボールが正確にコントロールされている為、正智深谷は前線からプレスをかけることが出来ない。特に5番DF中村優斗が左サイドバックの位置から比較的自由にポジションを移し攻撃参加するため、武南の選手のポジショニングはDF中村の位置によって変わっていった。そうして最終的にはサイドを攻略し、3番DF重信有佑のボレーシュートなど決定機を作っていった。

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 ゲーム展開的に武南に先制点が入るのも時間の問題かと思われたが、ゲームの流れとは逆に、劣勢の正智深谷が試合の均衡を破る。飲水タイム後の24分、ボールを奪った正智深谷が素早くパスを繋ぐと、11番FW山口陽生が相手GKの位置を確認してロングシュートを放つ。約40m程の距離から放たれたシュートは急いで戻るGKの頭上を越えてゴールネットを揺らした。

 「ここ一番の時に点を取るのがエースだから、お前のステージが出来たんじゃないか」と小島監督から言われていたという、今大会ここまでノーゴールのFW山口がまさしくここ一番で大仕事をやってのけた。

この試合抜群の存在感を示した武南5番DF中村優斗

 思わぬ形で被弾してしまった武南だったが、その後も焦ることなく丁寧に攻撃を組み立てチャンスを作っていく。後半に入ってもその流れは変わらない。しかし守護神1番GK小櫃政儀の前に形成された4番DF森下巧を中心とした正智深谷のブロックは時間が経過する程強固になっていった。

 同点に追い付きたい武南が選手交代のカードを切りながらより前に圧力をかける。特に一年生の29番MF松原史季がトップ下に入ると更に武南のギアが上がる。しかし今大会無失点の正智深谷も鉄壁のディフェンスをみせ、回収したボールを素早く繋ぎ敵陣まで押し返す。終盤になると武南の攻勢がより強まり怒涛の連続攻撃が展開されるも、GK小櫃のビッグセーブもあり、最後まで正智深谷が無失点で耐え抜き試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

 「誰もが昌平だろうという風に思っていたと思うので、一杯食わせたいと昌平を倒しての今日だったので難しい試合でした。武南も上手いし、あれだけ組織でゴール前まで運ばれて、やっぱり強いので、うちとしてはあの前半の一点があったのでこの戦い方ができました」という小島監督のコメントが物語るように、強敵武南に対して勝ち切れたのは、前半の一点が大きかった。そして今大会無失点という実績が選手の自信に繋がって決勝でも守り切る事が出来た。

 前回インターハイ4強に進出した2013年のチームとは「あの時とは持っているスキルも違う。(日本代表のオナイウ)阿道(横浜F・マリノス)がいましたし比べ物にはならないです」と小島監督は違いを説明し、「でも今回、阿道が日本代表でハットトリックをしたタイミングでインターハイ予選が始まって、今年のチームにはそんなに期待していなかったんですが、初優勝を出来たっていうのには何か縁があるなと感じました」とOBの活躍が選手たちに力を与えたようだ。

 インターハイに向けては「埼玉県代表なので最後まで負けたくないです。優勝なんておこがましいんですけど、一戦でも多く目の前の相手を倒していって、昌平を倒したチームといわれると思うんで『こういう粘りがあるんだ』ていうところを出していきたいと思います」と意気込みを語った小島監督。「1-0のドラマ」がここで完結し、全国の舞台で今度はどんなドラマをみせてくれるのか、非常に楽しみだ。

 一方、終始ゲームを押し気味に進めながら悔しい敗戦となってしまった武南の内野慎一郎監督は「完璧な0-1の負けゲーム。向こうの戦略通りになってしまいました。前半の決定機で仕留めきれなかったのがダメなんだろうなと思います。正智さんはきちっと状況判断して決めて。チャンスをものにするっていうところが出来ていたので自分たちも見習わないといけないなと思います」と試合を振り返った。残念な結果になってしまったが、この決勝の舞台で選手たちが魅せた華麗なサッカーは称賛に値する内容であった。決定力の部分で課題を残してしまったが、2年生主体のチームでここまでのクオリティーをみせた武南イレブンの今後に期待したい。

(文・写真=会田健司)

▽令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)埼玉予選
令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)埼玉予選