DF石原麟太朗が延長V弾!東山が阪南大高を下し近畿総体初V

初優勝を果たした東山(写真=森田将義)

 第74回近畿高校サッカー選手権大会の男子決勝が21日、滋賀県の布引陸上競技で行われ、東山(京都1)と阪南大高(大阪1)が対戦した。前後半で決着がつかず、延長戦までもつれた試合は延長後半10分に奪ったDF石原麟太朗(3年)のゴールによって、東山が2-1で勝利した。

 2大会ぶりのインターハイ出場を決めたのに続き、今度は3日で4試合をこなすタフな日程を乗り越え、東山が初の近畿王者に輝いた。福重良一監督は「昨日まで以上に強い相手なので押し込まれて、我慢する時間が長い」と選手たちには伝えていたが、立ち上がりから勢いよく試合に入り、俊足のMF阪田澪哉(2年)とMF李隆志(3年)を使ったサイドアタックで、阪南大高を押し込んだ。相手時間で試合を進めながらも、最後の精度を欠いたため、決定機前半22分に左CKからDF井上蒼太(3年)が放ったヘディングシュートのみ。時間の経過と共に阪南の時間も増えたが、「阪南はある程度蹴ってくるのが分かっていたので、拾えれば二次攻撃、三次攻撃ができると思っていた」と振り返るMF真田蓮司(2年)を筆頭にチーム全体で戦い続けた。

 対する阪南大高は、エースのFW鈴木章斗(3年)がJクラブに練習参加しているため、今大会には不参加。加えて、準々決勝の京都橘戦でDF西田祐悟(3年)と櫻本亜依万(3年)のCBコンビが負傷した。満身創痍の勝ち上がりでダメージが隠せなかったが、MF櫻井文陽(3年)は「連戦でみんな疲れていたけど、皆で頑張ることができた」と振り返る。DF今西一志(2年)と保田成琉(2年)の両SBを起点にボールを持ったら素早く前方に展開。競ったこぼれを二列目が拾い、二次攻撃を繰り出す形で見せ場を作ると、35分には今西のサイドチェンジを受けたMF田中大翔(3年)がカットインからゴールを狙ったが、枠を捉えることができず、0-0で前半を終えた。

ゴール前で競り合う両校(写真=森田将義)

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 試合が動いたのは、後半13分だった。自陣でのボール奪取から素早く櫻井、FW石川己純(3年)と中央を繋いで、左サイドへと展開。受けたFW辰巳悠河(2年)がカットインから放った右足シュートが決まり、阪南大高が先制した。追いかける展開を強いられた東山だが、FW藤枝康佑(3年)が「失点つかれても、落ち着いてプレーできていた」と振り返る。24分には右サイドの阪田からゴール前に入れたボールを反対サイドのDF仲里勇真(2年)が豪快に決めて、同点に追いついた。

 前後半で決着がつかず迎えた後半も一進一退の攻防が続いた。ここで先に見せ場を作ったのは、東山。延長前半1分には、後方からのパスを「ボールをおさめてくれるので、信頼して次の動きができる」(藤枝)FW中野翔真(2年)がヘッドで右に展開。抜け出した藤枝がゴール前に入れたボールに中野が反応したが、わずかに合わない。以降は相手ゴール前まで進出しても、シュートは打てずに時計の針が進んでいく。

 それでも東山に焦りの色は見られない。インターハイ予選の決勝では試合終盤に投入したGK中条俊介(3年)がPK戦で活躍し、勝利。この日も先発のGK佐藤瑞起(2年)が交代を覚悟し、ベンチに視線を送っていたが、福重監督は交替カードを切らなかった。その理由について、「僕がPK戦の用意をしていれば、選手はPK戦を想定した試合運びをしてしまう。延長戦の間に勝つんだと伝えるために、佐藤のままで行った」と口にする。こう着状態が続いていたが、指揮官からのメッセージを受けとったのか延長後半10分に再び、試合が動いた。

 攻撃参加からの攻め残りでゴール前に残っていた石原にボールが入ると、「良い所にこぼれてきたので、思い切って打った」と右足一閃。「劇的なゴールをあまり決めたことがないので、頭が真っ白になった」と振り返るゴールが決勝点となり、東山が2-1で勝利した。

 福重監督自身は鳥栖の金明輝監督らが在籍した初芝橋本を指導した時以来、23年ぶり2回目の近畿総体優勝だが、東山では初めて。2年生主体の若いチームで大会を制した価値も大きく、「これまで近畿総体に出た際は、2日目で負けていた。今回、2日目を乗り越えて色んな相手と対戦させてもらえたのは大きい」。固定気味のメンバーで戦ったインターハイとは違い、今大会は連戦を乗り切るため、多くのメンバーが出場気合を得て、アピールできたのも収穫の一つ。タフさと選手層を身につけた今の東山なら、全国でも上位候補として挙がりそうだ。

(文・写真=森田将義)

▽令和3年度近畿高等学校サッカー選手権大会
令和3年度近畿高等学校サッカー選手権大会