利府が健闘見せるも、仙台育英が得意のサイド攻撃を機能させ決勝進出

先制ゴールを挙げ喜ぶ仙台育英FW村井創哉(写真=小林健志)

 高校サッカー選手権宮城県大会は11月3日、キューアンドエースタジアムみやぎにて準決勝2試合が行われ、第1試合は大会5連覇を目指す仙台育英高と、ベスト4唯一の公立校利府高が対戦した。

 前半は仙台育英が得意のサイドからのクロスボールによる攻撃でゴールに迫り、3分にはMF明石海月(3年)のクロスからMF松本銀士(3年)がシュートを放つが、左ポストを叩いた。その後利府はキャプテンDF浅野楓葵(3年)を中心に集中した守備を見せ、ゴールを許さなかった。そして利府は29分にはカウンター攻撃からMF川瀬創大(3年)のシュートが枠に飛んだが、仙台育英GK落合孝昭(2年)がパンチングでしのぐ。

 仙台育英にとっては攻めながら度々利府のカウンターを受ける嫌な展開だったが、その流れを払拭するゴールが39分に生まれた。右サイドで抜け出した明石がクロスを上げ、ファーサイドで低い姿勢になって頭で合わせたのはFW村井創哉(3年)。「(2トップを組む)遼君(FW佐藤遼(3年))にセンターバックがついていて、相手のセンターバックの間にスペースがあったので、思い切って飛び込むだけでした。明石が良いボールを上げてくれました」と振り返った通り、最高のタイミングで合わせたシュートがゴールを突き刺し、仙台育英が先制して、1-0で前半を折り返した。

 後半も明石を起点に何度もクロスから決定機をつくった仙台育英は53分、後半開始からボランチに入ったMF大久保太陽(3年)が左サイドに開いて、アーリークロス気味のボールをゴール前に上げた。これが風に乗ってゴールへ吸い込まれるラッキーな得点で2-0とした。勢いに乗る仙台育英は68分またも右サイド明石のクロスを受けた松本がゴールニアサイドで右足を振り抜き、3点目のゴール。試合の流れを決定づけた。

 しかし利府も最後意地を見せ、72分DF佐々木祐人(3年)のロングスローを浅野がヘディング、相手GK落合が弾いたボールを再び浅野が拾って右足で豪快にゴールへ押し込んだ。その後利府は何度かカウンター攻撃から決定機をつくったが、反撃もここまで。3-1で仙台育英が勝利し、5年連続決勝進出を決めた。

仙台育英MF松本銀士(3年)は多くの決定機を演出し、自らも1ゴール(写真=小林健志)

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 仙台育英は得意のサイドからのクロスが3得点につながった。城福敬監督が「準々決勝の東北高がプレッシャーをかけてきたのに対し、利府は持たせても良いという形で引いてきたので、ゆっくり展開できたのですが、チャンスを何回か外してしまいました。前半最後のクロスからの攻撃が成功して、主導権を握る救いになりました」と振り返った通り、ボールを持てる展開であるが故に前半苦しんだものの、前半のうちに1点取れたことが大きかった。

 しかし懸念材料もある。「今大会毎試合失点している」と城福監督が語る通り、2回戦から必ず1失点してしまう守備が課題だ。失点の場面も「GK(落合)が2年生ということもあり、慎重になりすぎてしまった」と悔やんだ。また、57分エースストライカーであるFW佐藤遼(3年)が足を引きずりながらの交代。そのまま病院直行となった。「シュートを打った後、アフターで相手の足が入りました。VARがあったらPKだったのでは」と城福監督も状態を心配しており、3日後の決勝聖和学園高戦のピッチに立てない可能性もある。この状況に先制ゴールの村井は「サブのFW浅野塁(3年)もケガをしていて、FWにケガ人が多いです。ずっと試合に出ていた自分が背負わなければいけません」と、どんな事態になったとしても、チームを引っ張ろうと決勝に向けて決意を語っていた。

 一方の利府は力の差こそあったが、健闘を見せた。澤村東監督は「本当はもっと前から行きたかったのですが、相手の圧力に押されてしまいました。前半枠にシュートを飛ばしたシーンでゴールを取れたらもっと面白くなったと思います」と振り返り、「3年生がみんなすがすがしい顔をしていました。今年の代はまとまりがあって、選手たちが自立してやってくれたのが大きかったです」と結束して戦った選手たちの頑張りを称えた。1得点のキャプテン浅野は「満足はしていませんが、やるだけのことはやりました」と笑顔で語った。ベスト4唯一の公立校は全てを出し切り、すがすがしい戦いで大会を終えた。

(文・写真=小林健志)

▽第100回全国高校サッカー選手権宮城予選
第100回全国高校サッカー選手権宮城予選