「虎のドラフト1位」も感激!高知、明徳義塾を逆転し2年振り17度目の全国へ!

歓喜の高知イレブン

 コロナウイルス感染拡大防止のため、保護者・学校関係者以外の入場を禁ずる無観客で開催された第100回全国高校サッカー選手権高知予選明徳義塾高知による決勝戦は11月7日に高知県高知市の高知県立春野運動公園陸上競技場で開催された。

 昨年は準決勝で対戦し明徳義塾が4対1で高知に快勝。明徳義塾にとって4年ぶり8回目の全国出場・5年ぶりの全国勝利への推進力となったこのカード。ただ今季は、インターハイではお互いに準決勝敗退ながら、リーグ戦では高知がJFAプリンスリーグ四国で残り2試合を残し10チーム中3位と好調を堅持しているのに対し、明徳義塾はプリンスリーグ四国から降格した県1部リーグでも苦戦を強いられる状況でこの大会を迎える形となっている。

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 そんな両校のスターティングイレブンは以下の通りとなった。準々決勝からの登場で準決勝ではインターハイ県体表の高知中央に1対0で競り勝った高知は伝統の「4-2-2」システム。GKは1大阪騎士(3年)。4バックは右から5谷日向太(3年)、2橋本拓実(2年)、4松岡洸成(3年)、12西本翔馬(2年)。中盤はダブルボランチに17南部翔太(2年)と7笹岡翼(2年)。右に1年生の19森紺、左はキャプテンの10松井匠(3年)。2トップは11西田慎太郎(3年)と14角田楓磨(3年)が組んだ。

 対して今大会ではシード権を得るも1回戦から準決勝まで4試合を戦い、高知西との延長・PK戦を制してここまで上がってきた明徳義塾は変則的な「5-4-1」システム。GKは1年生守護神の氏原歩夢。5バックは右から15蔵元陸人(3年)、2濵口海翔(3年)、5牧野太智(3年)、6青山羅慧(3年)、7澤田馬瑠(2年)ながら、左サイドバックの澤田はボランチの位置まで出る時間帯が大半を占める布陣。中盤はボランチが3前田成翔(2年)とキャプテンの10林由斗(3年)。前線はここまで大会13得点の9原山元(3年)がワントップを張り、その後ろに20佐伯俊輔(3年)と24藤本 蓮(2年)が2シャドーで控えた。

 キックオフ後、しばらくはDFラインからつなぎながら穴を狙う高知と、くさびパスにプレッシャーをかけてカウンターを狙う明徳義塾。しかし、スコアが動いたのはその構図が崩れた11分のことだった。明徳義塾FW原山のシュートがわずかに外れた直後、GK大阪のロングフィードを受けた高知は、橋本→笹岡→西本とつないで右から左サイドへ展開し、西本は「相手の穴が開く部分を狙いに行って」左サイドを走りこんでいた松井匠へパス。

 そして高知就任2年目・大坪 裕典監督いわく「判断が速く、テクニックもあって両足を使うことができる」自らの特長を活かし、シンプルに左足でクロスを上げた松井匠のボールを併せたのは右サイドからPA右に走りこんでいた森の頭であった。

 相手DFから頭1つ抜け出して当たったボールがワンバウンドしながらゴール内に転がった瞬間、野球部のチームメイトと共に応援に訪れていた阪神タイガース1位指名・森木大智投手(3年)も思わず右腕を突き上げるファインゴールにより欲しかった先制点を得た高知は、その後も主導権を握ったまま前半を折り返した。

高知 vs 明徳義塾

 しかし、明徳義塾はハーフタイムで大きく流れを変える。前線の3人がDFラインへの圧力を高めつつ、中盤の選手がインターセプトを狙うことで「勢いを受けてしまった」(大坪監督)高知は防戦一方に。結果53分、原山がドリブルで仕掛けつつ、後方から走りこむ佐伯へスルーパスを送って奪った1点目。69分、中盤でのインターセプトのこぼれ球を拾った原山がドリブルで相手DF2人のバランスを崩し奪った逆転ゴールは「狙い通りに進められた」と明徳義塾・小松 晃監督も納得の2点である。

 後半ここまでシュートも撃てず窮地に追い込まれた高知。ただ、彼らはまだ「選手層」というカードを残していた。逆転された直後から55分に投入していた187センチFW13浪上博嗣(3年)の高さをいっそう使い始めた高知は76分、相手GKのこぼれ球を浪上が頭で落とし、松井匠の浮き球バックパスを谷が右足ボレーで押し込み同点。さらにアディショナルタイムには、「自分よりうまい」と兄・松井匠も認める途中出場・松井貫太(1年)のドリブルから右CKを獲得。

 そして、笹岡の蹴ったボールにニアサイドで「自分でもびっくり」の頭で合わせたのは、これも74分から途中出場していたFW21大久保 天満(1年)。かくして劇的な形で逆転を果たした高知は、アディショナルタイム4分余りを全員で守り切り、2年ぶり17度目の全国高校サッカー選手権大会出場権を獲得した。

 「全国では全員攻撃、全員守備で判断を大事にワクワクするサッカーをやっていきたい」と試合後、初の全国采配への意気込みを語ったのは大坪監督。熱戦を制した高知の選手たちは36歳・青年指揮官の下、明徳義塾の想いも背負ってえんじのユニフォームを大舞台でも躍動する準備に入っていく。

(文・写真=寺下友徳)

▽第100回全国高校サッカー選手権高知予選
第100回全国高校サッカー選手権高知予選