帝京長岡 vs 桐生第一

 その直後、桐生一は勝負に出る。10日のプレーオフ1回戦で負傷したFW吉田遥汰(3年)を投入。裏への抜け出しとボールキープに定評がある点取り屋を起点に巻き返しを図る。その交代策が機能すると、後半は一転して桐生一のペースに。相手も受け身に回ったこともあり、縦に速い攻撃でゴールに迫る回数が増えた。なかなかゴールをこじ開けられず、敗戦ムードが漂っていくが、73分に左SB倉上忍(3年)が流れを変える。裏に抜け出すと、技ありのループシュートを決めたのだ。これで勢いに乗ると、80分には左CKから大隅斗聖(3年)がヘディングシュートを放つ。直前のプレーで足が攣っていたが、気合で押し込んでタイスコアに戻した。85分に帝京長岡のMF五十嵐丈一郎(2年)が2枚目の警告で退場処分になると、桐生一はさらに攻勢を強める。「90分間で決めるしかない」。MF金沢康太(3年)の言葉通り、相手を仕留めにいくと、87分にDFラインの背後に抜け出した吉田が相手DFとの競り合いを制して前に出ると、GKとの1対1を冷静に決めた。

 「1−3になってかなり苦しかった。出足のところが鈍く、1点を返すまでは本当に辛かったですね」とは田野豪一監督の言葉。桐生一が残り17分から3得点を奪い、勝利を手繰り寄せた。試合終了のホイッスルが鳴ると、控え選手たちがピッチになだれ込んで全員の感情が爆発。11月23日の高校サッカー選手権の群馬県予選決勝では前橋育英に0−1で敗れるなど、悔しい想いを何度も味わってきた。その中で手にしたプレミアリーグ参入の権利。「今まで前橋育英が全国大会に出る機会が多かった。だから、米子北に勝利し、自分たちが全国でも通用することを証明できたので、この試合に勝ったことでよりそれを示せた」(田野監督)。選手権には出られない。しかし、悔しさを力に変えた桐生一にとって、この1年の苦労が報われる最高の勝利だった。

▽高円宮杯U-18サッカーリーグ2021プレミアリーグプレーオフ(参入戦)
高円宮杯U-18サッカーリーグ2021プレミアリーグプレーオフ(参入戦)