延長前半も東北学院は攻勢を仕掛けていく。特にエースの渡邉は再三に渡ってシュートを狙い、72分に左足を振り抜けば、77分にも巧みなターンからゴールを狙って相手を脅かした。それでもゴールが奪えず、延長戦後半へ。残された時間は5分を切ったが、ついにスコアが動く。左サイドを崩して、牧田侑大(2年)がファーで合わせる。このこぼれ球に反応した渡邉が豪快に蹴り込んで初の決勝進出を決めた。

花巻東 vs 東北学院(写真=松尾祐希)

 一方、初の4強入りを果たした花巻東はあと一歩のところで決勝進出を逃す結果に。しかし、今大会で積み上げた経験値は何事にも代え難い。菊池雄星、大谷翔平といった野球部が全国的な強豪として知られるが、元日本代表の柱谷哲二テクニカルダイレクター、元東京Vの清水康也監督ともに一から強化を始めたサッカー部はまだまだ発展途上の段階。県外の相手と3試合戦うことができたこと自体がチームにとっての財産である。試合毎に選手たちも大きな変化を見せ、見違えるようなプレーで評価を高めた選手もいた。そうした今大会の経験値について、清水監督もこう振り返る。

「私も正直、優勝が目標とは言えなかったけど、1つずつ勝って準決勝までこれた。今日も何本も打たれて入りそうなところを防いだけど、最後の1本を持って来れるかがチーム全体を通じて足りなかった。それは感じたはず。彼らとまたやり続けたい」。

 今回は惜しくも準決勝で敗れた花巻東。しかし、この経験は決して無駄ではないだろう。夏のインターハイに向けて、大きな一歩を踏み出したのは間違いない。

(文・写真=松尾祐希)

▽第21回東北高等学校新人サッカー選手権大会
第21回東北高等学校新人サッカー選手権大会