立正大淞南は魅力的なセットプレーを披露した(写真=柏原敏)

 追加点は25分に立正大淞南。FW17香西銀二郎(3年)がドリブルで強引に持ち運ぶとペナルティエリア内で相手のファウルを誘ってPKを獲得。これを香西が自ら決めて逆転に成功。後半に入ると逆転した勢いと前線から圧し続けるチームスタイルが噛み合う。開始早々にはイゴル・ヤンがカットインから決定機を迎え、その直後にもイゴル・ヤンの縦突破からのクロスでMF8多田侑磨(3年)がヘディングシュートを放つなど押せ押せムード。

 だが、聖和学園はCKを獲得してチャンスにつなげていく。立正大淞南同様に魅力的なセットプレーを用意してきており、キッカー役に4選手が立ちながらインプレーと同時に4選手がドリブルとランニングを交えながらゴール方向になだれ込むような攻撃で好機創出。と、そこまでは良かったが、流れを掴み始めたなかでアクシデント。同点に結び付けようとゴール前の攻防で角野がGKと接触してイエローカード。前半早々にも警告を受けており、2枚目の警告で退場処分。

 残り25分程、誰もが立正大淞南の勝利を確信した。

 しかし、事実は小説より奇なり。数的不利に陥った聖和学園だが、少しずつプレスに慣れ始める。自陣深くでプレスを受ける状況は変わらなかったが、主将のDF5小野喬(3年)を中心に最終ラインで焦れることなくつなぎながらビルドアップで剥がしていく。

 中盤では藤田が足もとに吸い付くようなボールタッチで複数人に囲まれてもボールロストせず、数的不利を組織でカバーしながら持ち運ぶ。前半から立正大淞南は前線、中盤、アンカーで構成された3層立てのようなプレスをはがされると一気に最終ラインを押し下げられて危ない場面を作られていた。相手の体力も少しずつ落ち始めたなかで、その隙を突くように聖和学園は敵陣深くまで運ぶ。そして、藤田のクロスからMF15方城陸斗(2年)がヘディング弾で同点に持ち込んだ。

 このままPK戦に持ち込まれるわけにはいかない立正大淞南。後半アディショナルタイム、ゴールネットを揺らす。FKからDF5坂井悠飛(3年)が折り返し、DF4三輪陽斗(3年)が劇的決勝弾!? しかし、このゴールはオフサイドの判定で認められず、何かドラマの起きそうな展開でPK戦にもつれ込む。

 その予想通り、聖和学園はGK12菅井一那(3年)が当たりに当たる。

 5本中3本のシュートストップに成功し、PK戦3-2で勝利に導いた。逆転され、数的不利を強いられ、それでも粘り強く同点へ。終了間際にはゴールネットを揺らされたが運も味方につけ、極めつけはGKの活躍で劇的勝利。心を揺さぶるエモーショナルな試合展開となり、聖和学園が2回戦へ駒を進めた。

(文・写真=柏原敏)

▽令和4年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
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