そして前半アディショナルタイム。右サイドに進出した矢板中央MF9渡部のクロスを胸トラップで受けたのはMF5田中。3人の國學院栃木DFを前にあえて背中を見せ反転しながらシュートコースを作った彼は振り返った瞬間に左足で強烈なシュート。これが突き刺さり濃密な前半は1-1の同点で折り返した。

 後半は矢板中央がFW11朴のロングスローなどを用い押し込む時間帯が続いたが、國學院栃木は再三再四のファインセーブセーブで防いだGK1高橋滉平を中心に粘り強い守備で対抗し、アディショナルタイム4分にはロングカウンターから途中出場の14川原來愛(2年)がクロスバー直撃のロングショット。互いに走力が全く衰えなかった延長戦でも両校が決定機を迎えることに。ただ、3度目のゴールネットはついに揺れることはなく、選手権出場の行方はPK戦に委ねられることになった。

 両者1人目を矢板中央GK1藤間、國學院栃木GK1高橋滉平が止め合って始まったPK戦の決着がついたのは5人目のこと。國學院栃木のキックがクロスバーをかすめたのに対し、矢板中央キャプテンDF佐藤が決めた瞬間、矢板中央は2年続14回目の選手権全国出場をつかみ取った。PK戦を終えた際、栃木県グリーンスタジアム中から起こった万雷の拍手が、この試合を表すすべて。そんな栃木県民と國學院栃木の想いも背負った矢板中央は過去5度跳ね返された決勝進出の壁突破と、昭和25年度の第29回大会で宇都宮が達成して以来70年以上遠ざかっている悲願の栃木県勢2度目の選手権制覇を狙う。

(文・写真=田原豊)

▽第103回全国高校サッカー選手権栃木予選
第103回全国高校サッカー選手権栃木予選