そして、迎えた77分。立て続けに迎えたピンチをGK藤吉が阻止した直後の出来事だった。右SBの福留大和(3年)が一気に駆け上がり、右サイドを深く抉る。相手のスライディングも間一髪ボールを浮かして外すと、ゴール前にライナー性のボールを送り込んだ。相手DFが2人寄せていたなかで大石が体を投げ出してシュート。「気持ちで押し込んだ」という右アウトサイドでの一撃がネットに突き刺さり、土壇場で鹿児島城西がリードを奪った。

 アディショナルタイムは3分。神村学園の猛攻を耐える時間となったが、最後まで集中力を切らさなかった鹿児島城西が8年ぶり8度目の選手権出場を手中に収めた。

 新田監督がチームを率いて7年。大迫勇也(神戸)らを育てた前任の小久保悟前監督からバトンを受けてから、選手権には一度も出場できていなかった。愛言葉は“打倒神村学園”。ライバルとは真逆の堅守速攻とハイプレスを徹底的に落とし込み、牙城を崩しにかかった。思うように結果が出ず、心が折れそうになったことは一度や二度ではない。今夏のインターハイ予選も決勝でリードを奪いながらも、後半アディショナルタイムに追い付かれて逆転負け。何度も煮湯を呑んできたなかで、ようやく掴んだ全国行きの切符。モチベーションは高い。

 「できれば1発目ぐらいから強いところがいいですね。(守備が特徴のチームだと)やっぱりペースが崩れてしまう。このためにやってきているから、 できればその強いところとやりたい。試合の最初からスイッチが入る」とは新田監督の言葉。重い扉を開いた鹿児島城西は気持ちを新たに、久々の全国大会に足を踏み入れる。

 

(写真・文=松尾祐希)

▽第103回全国高校サッカー選手権鹿児島予選
第103回全国高校サッカー選手権鹿児島予選