試合の立ち上がりに主導権を握ったのは日大藤沢だった。「(間合いが詰められなかったことに関し)相手に向かっていくんだけど、相手が自分よりレベルが高いと思うと腰が引けてしまったよね」と東福岡・志波芳則総監督が振り返ったように、右サイドハーフのMF蛭田悠弥の個人技やスピードに絶対の自信を持つFW矢後佳也の対応に苦慮。開始直後の前半1分にはFW中山竜一が裏へと抜け出し、左足でシュートを放たれた。その後も、主将DF小野寺健也などの高さを活かす日大藤沢のセットプレーに苦戦。東福岡は苦しい序盤の戦いとなった。

  流れが一変したのは前半のウォーターブレイクだった。この小休止が『赤い彗星』に流れを呼び込む。「ウォーターブレイク以降は相手の弱点や弱い部分が分かるようになって、1人1人が考えてプレーをできるようになったのかなと思う」と、主将MF中村健人が話したように守備からリズムを再構築。攻撃にもリズムが生まれ、試合の主導権を握って見せた。同25分にはDF小田逸稀のパスからMF藤川虎太朗がネットを揺らし待望の先制点。一気に流れをつかんだ東福岡は、同27分にも決定機を迎える。パスを受けたDF福重聡太が左足でゴールを狙うが、GK小菅陸のファインセーブを前にノーゴール。後半に入っても、同6分に1年生アタッカーFW福田湧矢が左斜め45度から右足でシュートを放つなど、積極的な攻撃を仕掛けた。その直後だった。同8分、左CKを得ると中村が意表を付き、PA外に待ち構えたMF三宅海斗にボールを合わせる。「凄いボレーシュートだったよ。(中村も)良いボールを蹴ったけんね。(セットプレーでは)競って勝てる状況じゃなかったから」(志波総監督)というゴラッソを背番号11が左足で沈め、リードを広げた。

 試合終盤になると日大藤沢が前線の選手を次々に投入。同21分に東福岡は蛭田に1点を返されてしまうが、「最小限の失点でいけたことは大きかった」(中村)というように、それ以降は得点を与えずタイムアップ。2連覇を目指す東福岡が準々決勝進出を決めた。

(取材・文・写真 松尾祐希)