サッカー界でも、いまやサッカーだけに取り組んでいればいいという時代ではない。Jリーガーの平均引退年齢は25、26歳。現役時代より引退後の人生のほうがはるかに長く、セカンドキャリアの形成は極めて重要な課題だ。近年、高卒でのプロ入りオファーを断って大学進学を選ぶ選手が増えているのは、人間的な成長や資格取得を目指しているからである。

 文武両道の本質は、人間性の育成にある。教科書や参考書だけに向き合っているだけでは、文化的な知識を得ることができても社会活動における多様な能力や協調性は育まれない。一方で部活動を通して協調性やリーダーシップ、タイムマネジメントなど様々なスキルが培われるが、それだけでは社会常識や一般知識は身につかない。

 重要なのは、どちらもバランスよく手にすること。日々そのことを意識して生活している高校生は多くないかもしれないが、そのことに早いうちから気づくことが、人間形成において大きな差を生むのは間違いない。

 東大進学者数全国トップ10を10年以上維持する超名門・渋谷幕張のサッカー部を率いる宗像マルコス望監督は「文武両道は高校生なら必ずできる」と語るうえで部活動の重要性を強く主張する。

【次のページ】 「サッカーだけやっていてもダメ?」激動の現代における“文武両道”の重要性(3)