数々のプロクラブのチームビルディングを指導する福富信也氏は勉強もサッカーも一体で考える必要性を説く(写真=多田哲平)

 「勉強がいくらできたって、人間として最悪だったら、ろくな大人にならない。勉強だけしていると教科書に載っていることしかできない。実際に足と手を動かして成功と失敗を繰り返さないと、生活において適応力がない人間になってしまいます。だからサッカーを通じて人間性だけは厳しくしつけます。人間性が変わると行動が変わりますから」

 いつの時代でも文武を極めようとする姿勢が人間形成に与える影響は大きい。「文」を追求すれば「武」にも好影響が生まれ、その逆に「武」を極めれば「文」にも相乗効果がある。そのことを意識して行動できているかも成長スピードに違いをもたらしそうだ。

 東京電機大学サッカー部の監督を務めながら、株式会社ヒューマナジーの代表としてJリーグクラブや一般企業へのチームビルディングの指導を行う福富信也氏は「思考の変換装置」というワードを用いて解説する。

 「勉強とサッカーだけに限らず、バイトや遊びも、すべて一体。あらゆることが根底でつながっていることを意識できているかは大事です。勉強だけ、サッカーだけという考え方をしているとエネルギーを無駄にするだけ。勉強もサッカーに通じるし、サッカーも勉強に通じる。つまり思考の変換装置を持っているか。サッカーは劇的な変化が連続する競技だからこそ、このVUCAの時代に適応できる能力を養える。そういう価値観を持って何事にも取り組めているかが重要です」

 変化の激しい時代に対応するためにも、行動がすべて自らの人間形成の基になることを意識し、異なる分野に応用していく必要があるのだ。

 特に「グローバル化」や「ダイバーシティ(多様性)」が重要なキーワードとなる現代は、より単一の専門分野だけでなく多様なスキルや知識を持つ競争力のある人材が求められる。異なるバックグラウンドを持つ人と交流や協働、競争する機会が増えるからだ。

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