公式戦の出場チャンスはいきなり巡ってきた。

 今季のJリーグ開幕を1週間後に控えていた2月16日、ルヴァンカップ第1節の名古屋戦で、早々にプロデビュー。81分、プロ10年目を迎える大先輩の土居聖真に代わり、ピッチに飛び出した。

1点のリードを許す展開のなか、3枚目の交代カードとして登場。慣れ親しんだ右サイドハーフのポジションに入った。試合の残り時間を考えたら、アディショナルタイムを含め、10分あまりだ。エンジンはすでに温まっていた。ピッチに入ると、すぐにトップギアだ。

ボールを要求し、積極的にゴールに向かった。まずは同点に、できれば逆転を。そんな思いでプレーしていたであろうことは容易に想像がつく。

 ところが、勝利への飽くなき情熱が裏目に出てしまった。

 試合終了間際の90分。自慢のドリブルでペナルティエリアに進入すると、相手選手に挟まれる形でゴチャとなり、ボールが大きく前方にこぼれていく。必死に足を伸ばした松村は、その先にいた相手GKと激しく交錯し、一発レッドを受けてしまったのだ。

 プロの第一歩は苦い記憶とともに胸に刻まれた。

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