“松村優太”の名が全国に広まるきっかけになったのは、やはり先の第98回全国高校サッカー選手権だろう。“シズガク”こと静岡学園(静岡)の攻撃のキーマンとして24年ぶりの大会制覇に貢献。背番号はもちろん10番だ。

 準決勝の矢板中央(栃木)戦では、試合終了間際に自らのドリブル突破から得たPKを冷静に決め、決勝進出の立役者となった。たとえ相手2人に挟み込まれてもスピードに乗ったドリブルで、その間をグイグイいく姿に歓声が上がった。

 意外に、華奢なんだな。それが個人的な第一印象だった。次に、目力があるなと感じた。困難にぶち当たったとしても、そこを乗り越えていこうとする意志の強さが目に表れているような気がした。自分の考えを明確にいうし、聡明だ。

 お笑いの街・大阪出身だからかもしれない。無茶ぶりされてもすぐに一発芸で返せる引き出しをいくつか持っているのだとか。

 プレースタイルそのままに負けん気が強く、向上心にあふれ、笑いの感性も持ち合わせる松村は、4月13日に19歳になった。“まだ”ではなく、“もう”というはずだ。

 高速ドリブラーの異名を引っ提げてプロの世界に飛び込んできた高卒ルーキーが、これからどんなストーリーを、どんなスピード感で、描いていくのか、心底楽しみでならない。

(文=小室功)