静岡学園イレブン(写真=K.Nhiyama)
同じく4強まで進んだ矢板中央だが、高橋健二監督が「去年はメンバーも揃っていたし、日本一を狙っていた。今年は去年出ているメンバーがひとりもいないので、誰もが難しいだろうと思っていた」と明かす通り、下馬評は決して高くなかった。実際に県予選も薄氷を踏む想いでの勝ち上がりとなり、全国でも課題だった失点癖は改善しなかったが、3回戦の鵬学園戦を無失点で凌ぐと、続く準々決勝の四日市中央工戦も完封勝ち。ファイナル行きがかかった静岡学園戦まで試合終盤まで”赤い壁”を作り、相手の猛攻を跳ね返し続けた。技術は高くないが、「最後まで諦めない高校サッカーらしい選手ばかり」と指揮官が評する面々が、「どのチームより守備練習をやってきたと思う」(DF長江皓亮、3年)と守備を徹底し続けた結果が、最後の大会で花開いたと言える。
そして、拘りの最たる例が、頂点に立った静岡学園だ。全国屈指の強豪ながらも、川口修監督がコーチから昇格してからの10年で選手権に出場したのはわずか3回。勝負に徹するライバル校の前に何度も屈し続けてきたが、上のステージで通用する選手の育成に拘り、技術と駆け引きに拘る”シズガクスタイル”を崩さなかった。練習で身につけた個の力を試合で試し、課題を修正し、また次の試合に挑む。そうしたサイクルを毎年のように繰り返してきたが、今年の代は呑み込みが速い選手が多く、一年を通じて逞しく成長を続けたのが特徴だ。相手の状況を見極めながら、パスとドリブル、サイドと中央を上手く使い分ける攻撃は、激戦区を勝ち上がってきた青森山田の選手が「これまでで一番強かった」と言わしめるほど多彩で止めようがなかった。もちろん、大舞台で自らの持ち味を出し切った選手が褒められるべきだが、拘りを長きに渡って徹底し続けた指導者の姿勢が掴んだタイトルと言っても過言ではない。
▽第98回全国高校サッカー選手権
第98回全国高校サッカー選手権