青森山田イレブン(写真=K.Nishiyama)

 令和初の選手権は、静岡学園の24年ぶり2回目の優勝で幕を閉じた。強豪校が居並び”死のブロック”と評されたAブロックを勝ち上がったのは、前年王者・青森山田だ。昨年12月には、高校年代真の日本一を決める高円宮杯プレミアリーグ・ファイナルも制し、絶対王者として他校に追われる立場となった今大会は、「初戦から、かなり過酷な組み合わせので、覚悟して大会に挑んだ」(黒田剛監督)。随所で感じたのは、「何か一つに特化するのではなく、何でもできるようにするのが我々の育成方針」(黒田監督)だ。高い位置でボールを奪ってからのショートカウンターがチームとして一番の狙いだが、ボールを保持できる場面では華麗な崩しでも、相手のゴールネットを揺らせる。また、セットプレーからの得点パターンも完備する。我慢の時間帯では代名詞である”ゴールを隠す”シュートブロックで失点を回避するなど粘り強く戦えるのも強みだ。2回戦の米子北、3回戦の富山第一と縦に速い攻撃を繰り出すチームから一転し、準々決勝の昌平、準決勝の帝京長岡とテクニカルなチームが続き、勝ち上がりの難易度は高かったが、2年連続で決勝までたどり着けたのは全方位に細部まで拘る青森山田だったからだ。

 Bブロックを勝ち上がり、新潟県勢としては初のベスト4進出を果たした帝京長岡も、「ボールを大事にする」スタイルに拘ってきたらからこそ掴んだ結果だった。2001年に、谷口哲朗総監督が帝京高校時代のチームメイトだった西田勝彦コーチと共に長岡ジュニアユースFCを設立。U-6年代からの一貫した指導体制を整備し、全国で戦えるチームを目指した。MF谷内田哲平(3年)、FW晴山岬(3年)、矢尾板岳斗(3年)ら幼稚園時代からチーメイトだった選手たちは、中学3年次にJFAプレミアカップで3位入賞するなど順調にステップアップ。最強世代と呼ばれた彼らは、パスとドリブルを巧みに織り交ぜた華麗なスタイルで、長岡を背負って挑む最後の大会を席巻した。攻撃ばかりに目が行くが、選手権優勝を目指し、夏以降意識してきた「高校サッカーらしく最後まで戦う姿勢」(古沢徹監督)も準決勝までを無失点で勝ち上がる原動力になったのは間違いない。

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▽第98回全国高校サッカー選手権
第98回全国高校サッカー選手権