(写真=四日市中央工サッカー部提供)

四中工スタイルは「攻守一体・自分の特長を最大限活かす」

 2018年度までコーチを務めていて感じたのは四中工は「選手権で勝ち進むと追い風が出てくる」チームということ。勝ち進むと相手が構えてくれたり、ウチの1年生が試合を通じて伸びてくれる。勝ちに風が吹いて、そこに乗っかる。

 自分も昨年監督として実感したんですが、樋口先生が一番緊張しているのは三重県大会の決勝戦。これだけは試合が終わった夜も興奮して眠れない。いいゲームもなかなかできないんですが、選手権に行くと(樋口)士郎先生はずっとリラックスして、楽しそうにしている。宿舎からオーガナイズやルーティンができていて、そういった空気が選手にも伝わっていたんだと思っています。浅野 拓磨(日本代表FW・現パルチザン・ベオグラード)が2年生の2011年度、選手権で準優勝した時はまさにその流れでした。

  四中工は三重県大会やインターハイでは相手の良さを消すこともやるんですが、選手権になると相手のスカウティングはもちろんするんですが、基本的には相手のよさを消すよりも自分たちの良さを活かす戦いを志向するんです。「全国で応援している方々に四中工のサッカーを見てもらおう」という話をするんですが、そこが2011年度は一気に現れた感じですね。

 「(浅野)拓磨の裏への飛び出しを見せてこい。(田村)翔太(現:ロアッソ熊本)のスピードで相手を切り裂いてこい」と言って送り出しつつ、中盤では國吉(祐介・元ユニバ代表)が締めてくれる。そしてDFの坂(圭佑・現:湘南ベルマーレ)や、GK中村(研吾・)といった 1年生たちには「思い切ってやってみろ」。そういう流れが準優勝した要因だったと思います。当時の僕は彼らの兄貴分的存在だし、彼らもノリノリなので「今日も点を取ってこいよ。全国の少年ファンが見てるぞ」という風に声をかけていました。

 四中工の強みはこのように自分たちの形がないところ。選手の特長によってサッカーがは変わるし、選手たちが自由に動く。よく皆さんに「四中工のサッカーってなんですか?」と聞かれるんですが、ウチは(ポゼッションサッカーの)昌平(埼玉)や(テクニックの)静岡学園(静岡)とは違う。しかも(堅守が持ち味の)矢板中央(栃木)とも違う。

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