三菱養和SCユース 庄内文博監督

 高体連のチームやJユースとも異なり、いわゆる“街クラブ”というチームがある。巣鴨や調布と東京を拠点に置く「三菱養和サッカークラブユース」がそれだ。街クラブといっても、三菱養和SCユースは、現在プリンスリーグ関東に所属し、今までに数多くのプロを輩出している強豪チーム。しかもそれほどの強さを誇りながらも、“サッカーを楽しむ”ことを貫くスタンスも持ち合わせている。今回はそんな個性あふれるチームを率いる庄内文博監督に、今までで記憶に残っている試合や三菱養和SCユースのセールスポイントについてなどの話をうかがった。

【フォトギャラリー】三菱養和SCユース

ーーーージュニアユースの指導者もされていたと思いますが、ジュニアユースとユースの指導で大きな違いなど感じていることはありますでしょうか?

 最近では、三菱養和SC調布ジュニアユースを2016年から5年間指導していたのですが、ジュニアユースの年代では、サッカーのベーシックな部分を全体像の理解と個人へのアプローチを順序だてながらいかにしてわかりやすく伝えていくかということを意識していました。

 ユースの指導者になってからは、プリンスリーグ関東で戦っているということもあると思いますが、勝敗の部分においての指導がより増したかなと感じています。勝つか負けるかという戦いの中で、自分たちはどうプレーしなければいけないのか。何を見て、何を考えて、何を選んでいくかというところの部分を指導する度合いは強くなっているかなと思います。

ーー今までで記憶に残っている試合などはありますでしょうか?

 「この試合」というより「どの試合も」という感覚ではいるんです。毎日の練習が全てだとも思っていて、その積み重ねが「1つのゲームに繋がっていく」という意識でやっているので。公式戦の1試合から、また次の1試合の間で選手たちがどう変わっていくかということの繰り返しだと思っています。そういうサイクルを繰り返していくことが全国大会のような大きな試合で勝ち進むことにもつながっていくのかなと思うんです。

 そういう意味でいうと、2014年のクラブユース選手権で優勝した決勝などは印象に残っていますね。決勝に辿り着くまでの試合も、毎日毎日大変な暑さの中での連戦で、「選手たちは本当によく頑張っているな」という戦いを1つ1つ乗り越えていったという独特な感覚はありましたね。

 特に2014年のクラブユース選手権は、(出向していた)ジェフユナイテッド市原・千葉から戻ってきてユースのスタッフになったタイミングでもあったので、整理できたことを色々と選手たちにアプローチしながら、それを試合で表現していった先に結果を残すことができたということは指導者として自信になったということはあるかもしれません。

ーー監督やコーチとして指導、触れ合ってきた中で印象に残っている選手などはいますでしょうか?

 一人ひとり個性があって、誰もが印象に残っている子たちなのですが、田中順也(現FC岐阜)は遅咲きだったという意味で印象に残っていますね。三菱養和SC巣鴨ジュニアユースから見ていましたけれども、中学生でレギュラーになれない中でも、すごくサッカーが大好きだというのが伝わる「サッカー小僧」という感じ。高校2年の夏くらいから“グーン”と伸びてきたんですよね。

 もともとキックは良くて、ドリブルも好きだったんですけれども、それほど速いという訳でもなく身体も細くて。ただグラウンドの壁に向かって、1人で左足のキックをずっと蹴っていた姿は記憶に残っています。そういうひたむきな努力がプロとしての活躍に結びついたのかなというのも感じますね。「こういう変わり方をする選手がいるんだな」と感じさせてくれた選手でした。

【次のページ】 コロナ前とコロナ後で変わったこと…