――判断の観点で見ると、入学当初の選手たちはどうでしょうか?
選手たちはサッカーの原則について、中学年代までに学んでいます。ただ、全ての選手が判断に長けているかというと、必ずしもそうとは限りません。なので、昌平では自由度を高めた時に判断できるように、その材料を増やすことを意識させています。自由を与えると、責任が伴ってきます。そこはサッカーと教育のリンクでもあります。そこを学ぶためには、ピッチ内外で判断の要素を大事にしないといけません。なので、チーム内でルールをあまり決めていませんし、遠征時の消灯時間も厳密に決めないんです。ルールを設けることも重要ですが、「明日は試合だから何時に起きるべきか」を自分たちで考えることも大切です。セルフコントロールする力を身に付ければ、サッカーのスキルの部分でも発揮できるようになると感じています。だから、選手の中でルールを決める場合があっても、僕から発信して何かを規則化するのはあまりしません。もちろん、それが良いかどうかは分かりませんし、中には、ルールを決めないことを緩いと捉える人もいると思います。昌平でも、スタッフ側からルールを与えていた時期もありますが、選手にとって本当に何が良いのかと考えたんです。選手にとって、楽なことではなく、将来を考えた上で何が良いのか。社会に出た時に「高校での厳しい経験があるからこそ、いまがある」という選手もいますし、「高校時代から自分で考えて行動していたから社会でも違和感なくやれている」という人もいます。どっちが良いと決められるわけではありませんが、うちは後者が多いと思います。ただ、自由にやったとしても、そこには当たり前の規律があり、学校でのルールもあります。それをスタンダードにしながら、自分で考えながら取り組んでいく。そこはサッカーも同じ。ジャッジするのが審判なので、それに背かないようにルールを守ってプレーした上で自由にやらせています。