PK戦を見守る矢板中央(写真=矢島公彦)

 シュート数は4対17本。肝を冷やした場面は数え切れず、大量失点したとしてもおかしくない。だが、伝統の全員守備で耐え、連日のPK戦で勝利を手繰り寄せた。

 1月3日、高校サッカー選手権の3回戦が首都圏で行なわれ、等々力陸上競技場の第2試合では矢板中央東福岡と対戦した。

 戦前の予想通り、序盤から矢板中央は防戦一方の展開となる。セットプレーで何度か攻め込んだが、ほとんどの時間は自陣で我慢を強いられる。両翼を担う青木俊輔(3年)、遠藤貴成(3年)に東福岡伝統のワイド攻撃を仕掛けられ、個人技に翻弄される場面が散見。突破されると、トップ下の上田瑞季(3年)や1トップの日高駿佑(3年)に危険な場面を作られた。しかし、GK藤井陽登(2年)、CB新倉礼偉(3年)、主将の右SB坂本龍汰(3年)を軸に身体を張った守りで最後の局面を突破させない。苦しみながらも前半はスコアレスで終えた。

 後半に入っても東福岡の攻撃に耐える状況が続く。時間の経過とともに運動量が落ち、最終ラインも押し上げられない。気が付けば、ペナルティエリア内を9人で固めるような状況が増えた。「欲を言えばカウンターやセットプレーで点を取りたかった」と髙橋健二監督は唇を噛んだが、得点を奪えない中でもゴールを許さないのは矢板中央の真骨頂。鬼気迫るディフェンスは時間の経過とともに気迫を増し、72分には決死の守りでこの試合最大のピンチを乗り切る。遠藤の右クロスから岩井琢朗(3年)に近距離で反応されたが、GK藤井が捨て身のシュートブロック。さらにこぼれ球を上田に詰められたものの、藤井と島﨑勝也(2年)が2人がかりで阻止した。

 絶体絶命のピンチを乗り切り、試合はPK戦へ突入。ここでまたしてもPKストッパーがヒーローとなる。藤井が2本目を完璧に読み切ると、東福岡は3本目と4本目を連続で失敗。PK戦を3-1で制した矢板中央が4年連続となるベスト8に進出し、5日の準々決勝で2年連続の4強入りを懸けて富山一と対戦する。

▽第99回全国高校サッカー選手権
第99回全国高校サッカー選手権