優勝を決めるゴールを奪った青森山田DF丸山大和(写真=松尾祐希)

 中学時代に全国大会に出場した経験はない。クリアージュFCから青森山田の門を叩いて3年。地道に積み上げてきたCB丸山大和(3年)が大舞台で主役となった。

 8月22日、全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会の決勝がテクノポート福井総合公園スタジアムで行われ、青森山田(青森)が米子北(鳥取)を2-1で下して16年ぶり2度目となる夏の日本一に輝いた。

 準決勝までの5試合で1大会最多得点記録を更新する28ゴールを奪い、守っても喫した失点は準々決勝の東山戦の2点のみ。圧倒的な強さで勝ち上がってきた青森山田だが、決勝は予想外の展開になった。10分にCB三輪椋平(3年)がペナルティエリア内でFW福田秀人(2年)を倒してしまう。このPKをMF佐野航大(3年)に決められ、今大会初めてリードを許した。

 先制点を決められた青森山田は猛攻を仕掛け、MF松木玖生(3年)を軸に攻め立てる。しかし、米子北の牙城を崩せず、試合は後半へ。右MF藤森颯太(3年)などが積極的に仕掛けたが、相手の身体を張った守備に苦戦して簡単にシュートを打たせてもらえない。

 時計の針は進み、残された時間は1分。敗戦の色が濃くなるなか、丸山がチームを窮地から救う。34分、左サイドでスローインを獲得すると、SB多久島良紀が得意のロングスローではなく、手前に陣取っていた小原由敬(3年)にボールを預ける。ここからゴール前にクロスが入ると、中央で競り勝った丸山が頭で押し込んだ。

 土壇場で同点弾を決めた丸山は以降も空中戦で強さを見せると、延長後半のアディショナルタイムにヒーローとなる。

 ボールが切れれば笛が鳴る可能性が高い状況で迎えた右CK。藤森のボールに対してニアへ走り込むと、頭で合わせたシュートはネットに吸い込まれた。決まった瞬間に試合終了の笛が鳴り、青森山田の優勝が決定。ラストプレーで勝負を決めた丸山は仲間のもとへ駆け寄り、ユニホームを脱いで喜びを爆発させた。

 中学時代は東京のクリアージュFCでプレー。全国大会とは縁がなく、青森山田入学後もインターハイや選手権でピッチに立つことは叶わなかった。迎えた高校ラストイヤー。春先から昨季のレギュラーが多く残る攻撃陣がフォーカスされる一方で、メンバーが総入れ替えとなった守備陣は不安視されていた。その中で一学年上の先輩・藤原優大(現・相模原)が背負った背番号5を託された丸山が、悔しさを感じていたのは想像に容易い。

 しかし、U-18高円宮杯プレミアリーグEASTで経験を積むと、最終ラインの柱として大きく成長した。丸山も”青森山田らしい”ゴールを隠す守備と空中戦の強さで存在感を高め、今夏のインターハイは守備陣の軸として奮戦。「リスタートで点を取れるし、多くのヘディングで跳ね返せる。去年の藤原優大のポジションをそのままやらせていますが、身長が180cmない中ですごく逞しくなってくれた」と、黒田剛監督も丸山の働きぶりに賛辞を送った。

 「自分は全国大会を経験したことなくて、このインターハイが初の全国大会。初めて優勝しましたが、こんなにうれしいんだなと感じました。最後にゴールを決められたのも、持っていましたね(笑)」。

 最高の夏になったのは間違いない。「苦しい2年間を乗り越えてきたので今がある」とは丸山の言葉。胸を張った背番号5は夏に掴んだ自信を胸に、次なる戦いに歩みを進める。

(文・写真=松尾祐希)

▽令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)