準々決勝後にスタンドに挨拶に行く興國の内野智章監督

 選手権大阪予選準々決勝で大阪産大附に3-3からのPK戦で破れ大会を去った興國。今年もMF永長鷹虎(川崎F)、FW荒川永遠(山形)、MF向井颯(福島)のJ内定3名、DF坂本稀吏也もJ入り濃厚となり注目を集めたが2年ぶりの全国大会出場には届かなかった。

 準々決勝の試合後、内野智章監督は「今までやってきたサッカーを全然やらなかった。情けないです。ただ勝ちたいだけになってしまっていたので残念で仕方ないです。気持ちはわかりますけど、やってきた事をやらなかったら勝てないです」と悔しさを露わにし試合を振り返った。

 ゴールは3ゴールとも見事だった。16分、右サイド深くでボールを持ったMF永長がマイナスにカットインしながらシュートコースを作り左足を振り抜き、このシュートがファーサイドのポストに当たって跳ね返ったところをFW荒川がゴールに押し込み先制。追い付かれた3分後の45分には左サイドからの浮き球をボックス右で上手くコントロールしたMF永長が対面したDFを剥がし得意のカットインシュートを突き刺す。再び追いつかれ延長前半の87分、縦パスを番MF山本蒼太がフリックするとFW荒川がスピードでDFを振り切り、前に出てきたGKに対し落ち着いてシュートを浮かせてゴールに流し込んだ。

 しかし選手権独特の雰囲気が選手たちを飲み込んだ。3度リードをする中で"勝ちたい"という気持ちが強過ぎたのか、普段なら繋ぐところも蹴ってしまいセカンドボールを拾われ劣勢に立たされた。「延長後半が始まって早々にCKから時間稼ぎに行ったじゃないですか?次の点数を取りに行けばいいのに、9分間時間稼ぎしようとしたんですよ。その時点でマインドがおかしいんです」と内野監督の言葉からも選手たちの焦りが伝わってくる。

 この試合で躍動したMF永長も「プリンスとかだったらあんな感じはないんですけど、やっぱり選手権って難しいなと思うし、みんな頑張っていたんですけど、セカンドボールを全部拾われていたんで、後ろに人数をかけているのに蹴ってしまうからセカンドを拾えないので、後ろに人数を掛けるならビルドアップするべきで、蹴るならバックライン以外を上げて競って拾うべきだったので、そこがチームとして狙いが定まってなかったのできつかったですね」とコメントしたように、普段通りに出来なかった事を敗因に挙げていた。

 今年の3年生にとってはこれが最後の選手権となった。その3年生について内野監督は「めちゃくちゃ良い奴らしかいない学年なんですけど、今日の結果が物語っているというか、ちょうど彼らが1年生の時に選手権(全国)に出たんですよ。その応援で忘れ物をしたりだとか、三脚がなくなったりとか、そういうのを繰り返した学年なので。めっちゃ良い学年なんですけどちょっと詰めが甘いんですよね(笑)。それが今日のゲームでも出たのかなと思います」

 「ただ、1.2年生の頃はもっとしんどい学年というか、自分に厳しく出来ない学年だったので。2年生の一番伸び盛りの時にコロナになって、セレッソから移ってきた選手もいるし、それによって出れなくなった選手もいるし、色んな背景をもった学年ですよね。でも人が良いので、これからが試されていると思います。人生がここで終わるわけでもないし、彼らのサッカーは終わらないので。ピッチに立てない選手もいるので、次のステージがあってピッチに立てる実力がある選手が泣いている場合じゃないんです」と、内野監督は選手権を終えた3年生についてコメントした。

 しかし今年の興國にはまだプリンスリーグの優勝争いが残っている。選手権で悔しい思いをした3年生たちのプレミア昇格というチャレンジでの活躍を期待したい。

(文・写真=会田健司)

▽第100回全国高校サッカー選手権大阪予選
第100回全国高校サッカー選手権大阪予選