帝京の注目大型SB入江羚介

 昨年10大会ぶりにインターハイで全国の舞台へと戻ってきた名門・帝京。7年前に帝京OBでもある日比威監督が就任してから新しい帝京を構築し、Tリーグからプリンスリーグに昇格を果たしさらに強化を進めてきた。そして1年生から出場機会を掴んだ選手が多い今年の3年生の代にはプレミアリーグ昇格や全国大会での躍進の期待がかかる。その中でも注目したいのが左SBのDF入江羚介だ。

 入江は小学校の頃はFWだったが、FC東京U-15むさしに入りSBに転向。FC東京ユースには進めなかったものの、帝京に入って1年から出場機会を掴むと、U-16日本代表候補にも選出された。入江の最大のストロングポイントは左足のキックの質の高さだ。鋭い軌道のクロスボールや、逆サイドに展開するパスの質は非常に高く、強烈なミドルシュートも持っている。

 新チームで挑んだNEW BALANCE CUP 2022 IN TOKINOSUMIKA(裏選手権) では昌平と両チーム優勝を飾った帝京。決勝戦後、「3年生がいなくなった中で自分たちの代になって"自分たちがやらないと!"という自覚が強くなりました」と話した入江。「細かいパスを繋いでいくサッカーなので、一個遠くに自分が飛ばして緩急をつけながらゲームメイクをして、自分のところから攻撃のスイッチを入れられるような展開にしたいと思っています。そこは自信を持ってやっているつもりです」とプレーからもチームを引っ張る意識が見てとれた。

 「内容的にはパスを繋ぐ意識を強くして、ビルドアップから崩しに行ったり、チームとしても"こういうサッカーで行こう!"と形がまとまってきているので、チームの完成度も例年に比べても高いんじゃないかなと思います」と入江が言うように、昨年から2年生主体でやってきた分、チームの完成度は明らかに他のチームより高い。

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 しかし入江は「それでもPKまでいって勝ち切れない試合も多かったので、そこもしっかり勝ち切れるチームにならないと。この後のインターハイだったり選手権で優勝するにはまだまだ全然遠いいと思うので、ここからもう一歩進めるようにチームの意識を変えて、強くなったところをみせたいと思っています」と課題も口にする。確かにゲームの主導権を握ることは出来ていたが、勝ち切るという部分で言えばゴールを取り切る力があと一歩足りない印象だ。

 「最後の攻撃の精度だったり、1枚剥がして自分で仕掛ける1対1の仕掛けのところ。ゴール前で1枚剥がせればゴールに繋がる場面もあると思うので、そこで自分の力だけで行けるような力が欲しいと思っています」と個人的な課題も口にした入江。左足という明確な武器を持っているだけに、その武器を最大限に発揮するには対峙した相手を剥がすことが重要だ。そういう意味では「超攻撃的で、自分でインターセプトしてそのままゴール前まで行ったりするので、あの積極性は参考にしています」と自信の理想のSB像にアレクサンダー=アーノルド(リバプール)の名前を挙げたのにも頷ける。

 入江にはもう一つ"高さ"という武器がある。「1年生の時は背が伸びている途中だったので、あまり高さの強みを自分では自覚していなかったんですけど、最近になってヘディングも調子良くて、高さも武器に出来るように完成度を上げたい」と181cmまで身長が伸びたことで、空中戦での強さも自分の武器に取り入れるつもりだ。

 現代サッカーで重宝される大型のSB。そして精度の高い左足を持つDF入江羚介のポテンシャルは間違いなく高い。それだけにゴールやアシストという目に見える結果も欲しいところ。流れの中からだけでなく「他の人が決めたりしていたので、チャンスが回ってきたら蹴りたいですね」とレフティーも多いチームで、"FKのキッカーを掴み取ることが出来るか"というのも大きいかもしれない。

 そして今年最高学年を迎える入江は「自分はSBなのでまずはディフェンスをしっかりやる事を意識しているんですが、大学やプロのスカウトの方が来ていたのでアピールする気持ちもあって、守備も攻撃も両方できるSBをみせたくてやっていました」と、積極的にゴールも狙い自身のプレーをアピール。高卒プロ入りも視野に入れている。

 チームとしても今年の帝京は注目だが、左SBの入江にも是非注目して欲しい。

 (文・写真=会田健司)

▽NEW BALANCE CUP 2022 IN TOKINOSUMIKA(裏選手権)
NEW BALANCE CUP 2022 IN TOKINOSUMIKA(裏選手権)