武南は関東大会の県予選で大宮南を下して準決勝へと駒を進めた(写真=多田哲平)

 「ずっと攻撃を続けられることはないけど、できるだけ攻撃の時間と回数を増やしたい。そしてクリアボールを拾って、自分たちのゲームにしていく。それが自分たちのスタイル」

 指揮官がそう語る理想のスタイルを体現し得るだけの人材はいる。浦和レッズジュニアユース出身で、1年生時から10番を背負うMF松原史季(2年)をはじめ、どちらも迫力あるオーバーラップが光る加藤天尋(3年)と江川颯軌(3年)の両SB、そして大宮南戦でゴールを奪った櫻井など、攻撃センス溢れるタレントは多い。

 「上手く噛み合ったら面白いはずです。でも今日は……。どのチームも同じだと思うんですよ。噛み合わないのは何か原因があるわけで、それがゲームで出るのは、普段の練習からつながっているということ」

 豊かな才能が揃うチームの歯車を噛み合わせるカギは、精神面のコントロールだ。それは選手自身ができることでもあり、スタッフが導けることでもある。

 「みんな熱くて、雰囲気はすごく良いです。一生懸命で、仲間意識も強いし、みんなでゲームをやろうという気持ちが見える。だから練習にストレスはなくて、こっちが熱くなって怒ることは少ないです。ただ我の強い選手もいるので、それが悪いほうにいかないようにコントロールしていきたい。基本的には素直なんですけど、やろうとしすぎちゃって強気すぎる発言が出てくるんです。それはわがままになってしまうので、そういう精神的なコントロールはすごく大変なチームだなとは思います」

 まだ粗削りなチームながら、全国で躍進するだけの力は秘めているはずだ。特大のポテンシャルを引き出すためにも、内野監督は目の前の試合に集中し、その一つひとつを糧にしていくつもりだ。

 「優勝したいとか、そういうことは僕は言わないです。1試合1試合、戦っていく。そして選手権につなげていく。上を狙うために強いチームにもチャレンジしてやっていく。そのために今どうするかを作っている段階です」

 集大成となる冬の選手権で2006年以来となる全国大会出場を果たせるか。そのためにまず足もとから見つめる内野監督の言葉の裏には、名門復活への意気込みと力強さが感じられた。

 4月27日の準決勝で武南は、東京成徳大深谷と相まみえる。

(文・写真=多田哲平)

【マッチレポート】大宮南 vs 武南

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