本人も驚きの選出となった大会MVPを受賞(写真=会田健司)

 初戦、静岡学園は神村学園と対戦。プレミアリーグWESTの再開に向け、両SBを変更するなど選手選考の意味合いも強かった静岡学園は守備が機能せず、U-19日本代表候補FW福田師王にハットトリックを許すなど0-7の大敗。しかし、大差をつけられ劣勢の状況でも孤軍奮闘の活躍を見せた高橋は、ノーゴールながらも強烈なインパクトを残した。

 2試合目となった昌平戦では「荒井が一発やったので凄い燃えました」と交流のあるMF荒井悠汰に対抗心を燃やし2G1Aと全得点に絡む大車輪の活躍。そして3試合目の興國戦、チームは1-2で敗れたものの、CKからDF行徳瑛のゴールをアシストし、その後もボールを持てばチャンスや決定機を作り、興國ゴールを襲い続けた。

 「去年は前線に良い選手が揃っていて自分がやらなくても勝てるチームだった」と、ゴールを狙うよりもチャンスメイクが目立った髙橋だが、今年は「自分が決めないといけない」と試合を決める役割を担う。

 川口修監督も「ボックスの中で仕事をしないとプロでは通用しない。髙橋は決め切る力のところが課題なので」とよりゴールを決め切れる選手に成長することを期待している。

昌平戦でゴールを決めて喜ぶ髙橋(写真=会田健司)

 髙橋の代名詞とも呼べるドリブルには特徴がある。持ち運ぶ際、利き足の右足ではなく左足で細かく押し出すようにタッチする。これはガンバ大阪ジュニアユース時代に右サイドにコンバートされたことがきっかけで身に付いたという。

 「今では左の方が持ちやすいです。元々両足の練習をしていた上で、中学校の時に右サイドにコンバートされたので、そこから今のスタイルになりました」。

 左足で持ち運ぶことで、いつでも右足のキックを使え、さらには左足でカットインしてそのまま左足でシュートも打つことが出来る。しかもその左足の精度が高い。

 さらに、常に顔を上げゴール前の状況を確認しながらドリブルをするので、ドリブル、パス、クロス、シュートと常に選択肢を持って判断が出来る。そのことでDFは飛び込むことが出来ず、対応が後手にまわってしまうのだ。

 実際、髙橋と対峙した興國DF常藤奏は「両足で持てるのとシュートも常に狙っているので対応しにくかった」と口にした。

 ここまで強烈な武器を持つ髙橋には高卒プロ入りも期待されるが、「進路に関しては焦ってないです」とキッパリ。さらに「自分は海外でやるという目標があるので、それを絶対に実現させる。この身長でも海外でやれるというのをみせたいです」と、将来は海外でのプレーを目指す。

 「点も取れるし、ドリブルもあるし、ポテンシャルはまだまだありますね。去年いた古川陽介(ジュビロ磐田)に比べても遜色ない力があるし、古川よりも点を取れるので、そう考えると次のステージでどれだけできるか凄い楽しみですね」と川口監督も太鼓判を押した。

 

静岡学園イレブン(写真=会田健司)

 「喋るなって言ってもずーっと喋っていますよ(笑)。クールダウン中も一人だけ喋ってます。本当に面白いキャラクターです」(川口監督)ムードメイカーの一面も持つ髙橋だが、試合になれば試合を決めるアタッカーに変貌する。157cmと小さな身体でどこまで通用するのか。将来が本当に楽しみな選手だ。

 静岡学園は9月4日にプレミアリーグが再開を迎える。再開初戦の相手は首位のサガン鳥栖U-18だ。

 第3節で対戦した際には2-0で勝利したものの、相手が退場者を出したにも関わらず試合内容で上回れず、押し込まれてしまった。髙橋は「まだまだ優勝は諦めてません。ここでしっかり差を埋めたいし、前回対戦の時は一人少ない鳥栖にあれだけやられたので、どれだけ差が埋まっているか、追い越せているのかわからないですけど、凄い楽しみです」と再戦を心待ちにしていた。

 インターハイでは全国出場を逃した静岡学園。残るプレミアリーグと選手権では試合を決める選手に進化した髙橋がチームを勝利に導く。

 (文・写真=会田健司)

▽ユースワールドチャレンジ・プレ大会 2022
ユースワールドチャレンジ・プレ大会 2022