「バウンドして（頭を）超えると思った。ディフェンダーも多分ボールが超えるだろうと油断してると思って、逆に裏ついた」。

　その瞬間、彼の頭の中には、すでにディフェンスの「未来」が見えていたのだろう。ボールが頭上を越えようとした、まさにその瞬間に足を伸ばし、アウトサイドで流し込んだ追加点。「状況判断力の高さが光る」そのゴールは、技術、戦術眼、そして大胆さという、波壁の持つエレガンスが凝縮されたものだった。

　その一撃は、重苦しかったチームに一時の安堵をもたらしたが、試合はその後、予想外の展開を見せる。橘の「緩み」から2度の失点を許し、ゲームは再び緊迫の度を増す。結果的に勝利を掴んだものの、波壁の言葉は勝利の余韻に浸ることはなかった。「危なかったっていうのが1番。得点もできたんですけど、そんな形で崩してとかで得点できたわけではないし、失点ももったいなかったんで、まだ改善があるかなと思いました」。彼の視線は、既に次の次元へと向けられている。

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