一本止める度にどよめきが起こっていく。この日駒場スタジアムが「クリス劇場」と化した。
3回戦の浦和南戦で1本、準々決勝の正智深谷戦は2本のPKを止めた西武台のビッグセーバー、高橋クリス。この日も延長後半、栗田のゴールで同点とすると高橋にお呼びがかかった。
「試合前に武南のPKを見ていて、1本目はそれ通りに飛んだんですけど、逆を取られてデータを分析されているのはわかっていたんだなと。あとはもう感覚で飛びました」。2本目を右に飛んで止めると、3本目は左のコースをついたキックに飛びついてセーブ。4本目もキックの瞬間まで耐えて得意の右で仕留めて、この大舞台でなんと3連続ストップで勝負を決めた。
指揮官もデータいらずと語るPK技術は、以前にも書いたように全体練習後に有志で行われるPK練習で培われたもの。「日頃からいろいろな子のPKを受けて、体型や蹴る体勢、踏み込みのステップだとか、そういう直感が遊びの中で身についている」と守屋監督は分析する。試合前日も練習自体は6時に終わった中で、日暮れ後も仲間たちのPKに付き合っていたという。