高川学園イレブン(写真提供=オフィシャルサポート)

 後半、高川学園は引いて守るだけでなく、前からの守備も仕掛けるようになり、押し込まれる展開から中盤で激しくぶつかり合う展開へと様相が変わる。そして、それが追加点という形で実を結ぶ。後半29分、左サイドでボールを奪い、そのまま速攻へ持ち込むと、PA内まで持ち込んだ奥野の折り返しを逆サイドから走りこんだMF清永和暉が決めてリードを2点に広げる。

 残り10分強で2点ビハインドとなった昌平。先制点の際は動揺を見せなかったイレブンにも落胆のしぐさや表情が見られたが、必死に前を向いてゴールを目指す。反撃の狼煙をあげたのは、2失点した直後に投入されたMF篠田翼(1年)だ。後半40分、須藤が敵陣左サイドで相手のパスを奪い、ドリブルで中央へと突き進み、相手を引き付けて右へ出したパスを、走りこんだ篠田翼が右足でサイドネットへ蹴りこんで1点を返す。するとアディショナルタイムに突入した85分にドラマが待っていた。左サイドから須藤がドリブル突破を図ってFKを獲得すると、須藤のあげたボールを、交代出場のMF篠田大輝がヘッドで押し込んで、ラストプレーで同点に追いついた。

 同点ゴールと共に後半終了のホイッスルが吹かれ、勝負の行方はPK戦へ。互いに1人ずつが失敗して迎えた9人目。先行の高川学園が外したのに対し、後攻の昌平は小川優介(3年・鹿島内定)が決めて2回戦進出を果たした。

 試合後、値千金の同点弾を決めた篠田大は「このチームを救ってやろう、という強い気持ちが出ました。『自分のところに来い!』と思っていたら本当にボールが来た」と振り返る。「あのFKがラストプレーなのはわかっていたし、これを外せばみんなとサッカーできるのも最後。でも、ここで決めれば、まだみんなとやれる。念じる、じゃないですけど『俺のところへ来い!』と思っていました」と喜びをかみしめた。1点目を決めた弟の篠田翼と共に交代出場。ピッチに入る際に「俺ら兄弟でやるぞ!」と声をかけたという。公式戦で兄弟そろってゴールを決めたのは初めての経験。しかも、チームを救う大仕事だった。

【次のページ】 その兄弟アベックゴールをアシストしたのが須藤だ。

▽第99回全国高校サッカー選手権
第99回全国高校サッカー選手権