同点ゴールを喜ぶ秋田U-18齋藤恒星(写真=小林健志)

 その後は互いに激しく攻め合うもゴールを奪えず引き分け濃厚となった90+4分秋田U-18のラストプレー。DF石戸良太(2年)のクロスをFW大塚裕斗(3年)が折り返し、最後はFW佐々木匠太(3年)が「石戸がファーに出すと思ったので、大塚が絶対折り返してくれると思って、中に入ったらボールが来たのでうまく押し込めて良かったです」とヘディングで逆転ゴールを決めた。秋田U-18の選手たちが歓喜に沸く間に試合終了の笛が鳴り、秋田U-18が劇的勝利を飾った。

 秋田U-18の熊林親吾監督は「退場者が出たので数的有利をつくれました。数的同数の時はちょっと押し込まれていましたが(前半の失点を)1点でしのげたからこそ、こういうゲームができました。今までやってきた相手を見てポジションを取って確実なプレーを増やすことと、大胆さを大事にしました。選手の良さを並べて出しただけで、選手はよく頑張ったと思います」と試合を振り返った。「私たちはスーパープリンスリーグ東北の中で一番自粛をしたチームです。クラブとしても選手としても、他の人たちのために、親と周りの人たちのために活動を自粛しました。コロナと勝負するのではなく、周りの人たちと自分を守ることを大事にしました。8月も秋田県内で新型コロナ感染者が出て、リーグ開幕直前に10日間活動自粛となりました。何も練習せず開幕戦の青森山田高戦に臨んだので、何もできませんでした」と満足な準備ができず、開幕戦で1-13と大敗スタートを喫した。

 しかし、遠野高やモンテディオ山形ユースに引き分け、聖光学院高に勝利するなど徐々に調子を上げた。「山田戦で一つ光が見えて、そこから試合を重ねていって成長しました。まだまだ足りなくて、一人少ない仙台の選手の方が走れていたと思います」と熊林監督は謙虚に語るが、選手たちの頑張りに手応えを感じているようだった。キャプテンのDF伊藤慶亮(2年)も「相手が退場してからは自分たちがやりたいようにボールが持てて、自分たちのペースになりました。チーム全員が走りきり、諦めないで貪欲にゴールに行った結果です」と胸を張った。

 熊林監督は「クラブに1回逆風が吹きましたが、アカデミーもトップも追い風に変えていくようにやっていきたい」とも語る。観客水増し報告問題でクラブが揺れる中、明るい話題を提供しようとひたむきな戦いを見せる秋田U-18。昨季に続く日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会出場に向けても視界良好だ。

(文・写真=小林健志)

▽高円宮杯 JFA U-18サッカースーパープリンスリーグ 2020 東北
高円宮杯 JFA U-18サッカースーパープリンスリーグ 2020 東北